レンタル・シェア文化を浸透させるためのブランディング (後編)
必要なときに必要なだけ利用できる経済性や合理性が支持され、広がりを見せているレンタル・シェアリングサービス。車からファッション、スペース、スキルまでさまざまなカテゴリーでサービスが生まれている。ただ、なんとなく存在は知っているものの、一歩を踏み出すには至っていない生活者が多いのも事実。成長過程のサービスの最新プロモーションを取材した。
業界別販売促進
消費者のヘルスケアニーズの高まりに伴い、毎年規模が拡大してきたドラッグストア市場。近年は、コンビニなど異業種によるOTC医薬品販売への参入や、医薬品のネット販売解禁などが相まって、業界を超えた競争が激しくなっている。一方で、セルフメディケーションの推進や訪日外国人の増加など、新たな需要創出につながる追い風も吹いている。社会の動きをいち早く捉えた魅力ある売り場づくりの事例を取材した。
第一類医薬品は薬剤師からの説明を受けやすいよう、調剤カウンター近くに配置。また、調剤室をガラス張りにしたことで、薬剤師の意識が売り場に向きやすくなり、来店客への接客機会が増えた。(スギ薬局上地一丁目店)
コミュニティスペースには、自由に健康チェックができる測定機器を設置。体組成測定は月間200名以上が利用する店舗もあるという。毎週末には専門スタッフによるミニイベントを開催している。(写真はスギ薬局寺津店)
ヨーグルト売り場では、それぞれの乳酸菌の役割を説明したボードを掲出し、かつレーンPOPでも表示している。(スギ薬局寺津店)
高齢者のかむ力に合わせた介護食の選び方を、管理栄養士が手作りPOPで伝授。(スギ薬局上地一丁目店)
ビューティーアドバイザーが、自分に合った洗顔料選びのコツを実体験をもとにPOPで説明。(スギ薬局上地一丁目店)
ドラッグストア市場は、この10年間で約1.5倍の6兆円に拡大した。日本チェーンドラッグストア協会の『日本のドラッグストア実態調査』によると、2014年度のドラッグストアの市場規模は6兆679億円(推定値)で、過去最高を更新した。
売上増に大きく貢献しているのが、食品カテゴリーである。2014年度の各カテゴリーの売り上げ構成比は、「医薬品」が32.1%、「化粧品」が21.9%、「日用雑貨」が21.3%、食品を含む「その他」が24.8%。なかでも順調に伸びているのが、食品を含む「その他」のカテゴリーである。
消費者にとっても、ドラッグストアは食品購入先としての存在感を増している。食品の購入先をたずねたアンケート調査において、「ドラッグストアで購入する」と回答した人の割合は、「飲料」(17.4%)、「菓子」(13.4%)、「インスタント食品・缶詰」(11.6%)、「酒類」(10.3%)などの品目で多かった(日本政策金融公庫・平成25年度上半期消費者動向調査より)。
また、ドラッグストアを利用する理由として多かったのは、「価格が安い」(83.3%)だった。コンビニが利便性で成長してきたのに対し、ドラッグストアは価格訴求が消費者を引きつけてきたことが分かる。
市場拡大に貢献している要因としてもう一つ挙げられるのが、医療機関からの処方せんを受け付ける調剤事業の伸びである。調合事業は、以前は医療機関のそばの“門前薬局”が主力だったが、近年は街中の調剤併設型ドラッグストアが複数の医療機関の処方せんを取り扱うことで、「かかりつけ薬局」の役割を果たそうとする動きが強まっている。調剤医療費の市場規模は年々増加しており、2013年度は7兆円を突破した(厚生労働省調べ)。ドラッグストア業界もこの市場を取り込もうと、調剤併設型店舗を増やしたり、調剤室を店内の見やすい位置に配置するなど、調剤事業を強化している。
マツモトキヨシは今年2月から、医療機関で受け取った処方せんを来店前にアプリを通して店舗に送信することで、薬を受け取る時間や店舗の指定ができる「処方せん送信サービス」を開始した。調剤薬局での待ち時間を短縮し、好きな時間に薬を受け取れるようにすることで、利用者の利便性向上を狙う。通勤の途中や買い物ついでに調剤サービスを受けられる、あるいは普段利用するドラッグストアで薬をもらえる、という便利さが利用者にとってはうれしいもの。受付対応する薬剤師の質とともに、そうした利便性を感じられる店舗に、調剤が伸びる可能性がありそうだ。
ただし、懸念材料もある。市場は伸びてはいるものの、成長に勢いがなくなっているのだ。2014年度の市場規模は対前年比1%増で、かろうじて前年を上回った。大手ドラッグストア各社の2014年度の売上高を見ても、マツモトキヨシホールディングスは4,855億円(前年比2.0%減)、スギホールディングスは3,836億円(前年比5.1%増)、ココカラファインは3,491億円(前年比0.1%減)となっている。
業界の総店舗数は390店舗増えて1万7,953店舗となったが、1店舗あたりの売上高は3億3,799万円と、2年連続で減少した。市場は少しずつでも拡大傾向にあるが、競争は激しさを増している。
その背景には、少子高齢化と人口減少によるマーケットの縮小に加え、医薬品販売における規制緩和の影響もある。
2009年の改正薬事法施行により、コンビニなどの他業種でも第二類・第三類医薬品を販売できるようになった。また昨年6月からは、一般用医薬品のネット販売が解禁された。業界を超えた競争がますます激しくなっている。
一方で、新たな需要開拓の芽も見られる。ドラッグストアの調剤事業の伸びに伴い、高齢者の利用も増えている。高齢者にも訪れやすく買いやすい売り場づくりは、新たな需要掘り起こしの一つのポイントになりそうだ。今回取材したトモズでは、2012年以降、幅広い層の生活者を意識した売り場づくりを進めている。
二つ目は、セルフメディケーション推進の動きである。セルフメディケーションとは …