広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバルの中で世界最大級の規模を誇る「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」。今年は通常の「カンヌライオンズ」のほか、従来のイノベーション部門が独立した「ライオンズイノベーション」、昨年から始まった「ライオンズヘルス」の3つのフェスティバルで構成された。全21部門のエントリー数は4万133点に及んでいる。ここでは、ダイレクト部門について紹介し、プロモーションに活かせるヒントを探る。ダイレクト部門は、ダイレクトマーケティングを審査対象とするが、近年は、メディア環境の激変にともない、リアルイベントからアプリまでと非常に守備範囲の広い部門となっている。

他の自動車メーカーのCMが流れている間にハッシュタグをつけてツイートすると、「Volvo XC60」が当たる、というVOLVO の史上最強の横取りキャンペーン。計5万3194ツイートされ、XC60のセールスは、試合後1カ月で70%増となった。
ダイレクト部門 ●グランプリ
「INTERCEPTION」
広告主:VOLVO
広告会社:GREY NEW YORK
国:USA
他社のCMをデジタルで乗っ取る?
これからの「ダイレクト」の方向性を打ち出す年、と銘打ち審査が行われたダイレクト部門。ターゲット設定が明確なもの、消費者がアクションを起こせる窓口を設定していること、プロモートする商品と結びついていることを前提に、作品が選ばれた。
そのグランプリに輝いたのは、VOLVOの「INTERCEPTION」。スーパーボウルで物議を醸したキャンペーンだ。
スーパーボウル(プロアメリカンフットボールリーグの優勝決定戦)は、テレビ視聴率が軒並み40%を超えるほど人気だが、そのCM放映料は高額。今年VOLVOはCMの放映はしなかった。その代わり、競合企業のCMが流れている間、ツイートすると車が当たるキャンペーンを実施したのだ。
#volvointerceptionのハッシュタグを付け、誰に車を贈りたいかを書いてツイートするもので、競合CMが流れている間、1分あたり平均2000ツイートがあった。
まさにアメフトのゲームのように、競合他社のCMをインターセプト(阻止)し、視聴者の関心をVOLVOに向けさせてしまったのだ。
消費者もアンチテーゼを面白がった
ダイレクト部門で審査を行ったADK原田太一氏は、グランプリ作品についてこう話す。「従来メディアの最高峰であるスーパーボウルのCMを、ダイレクトという手法を持って、インターセプトし、広告の価値すらも変換してしまう力を持つメッセージ性が決め手になりました。
キャンペーンに参加した人たちは、もちろん車が当たることに惹かれているのは事実だと思いますが、既存のマスメディアの雄に対してのアンチテーゼを面白がっているところがあったのも事実だと思います。『広告が効かなくなった』と言われている昨今、いかに消費者を巻き込んで、今までのやり方に対するアンチテーゼを打っていくかがグランプリに輝いた理由だと思います。
この作品は、クライアントから消費者へという一方通行ではなく、クライアントと消費者が同じサイドに立ち、スーパーボウルという媒体に対してのチャレンジを共有したとも言えます」。
スーパーボウルのCMを …