
店頭展開までを視野に入れた研究で卸売業を読み解く
東洋大学経営学部、菊池宏之教授は「流通」を研究領域としている。特に卸売業についての研究は流通政策研究所(現・流通経済研究所)に所属していた頃から継続している。
小売店頭に商品を陳列し、如何に訴求していくか、という業務はメーカーと卸が支援していることが多く、現実的に小売店の売り場に人と知恵を最も多く出しているのが卸だと指摘する。「卸の仕事は、顧客である小売店が消費者に支持される施策を提案・推進することだと考えています。卸と言うとそこまで含まれないこともあるので“中間流通”と表現することもあります」と菊池教授。
メーカーや卸が提案する新商品が適切なタイミングで店頭に並ばないと、販売機会と利益の損失を生む。大手小売などは、本部が商品の導入を決定しても小売店頭での実行率が低いことが課題となっている。そこで、菊池教授は関西の有力卸企業と連携し、店頭の実態調査を実施。適切なタイミングでの売り場づくりができないと、利益の損失になることを明確化し、卸が店頭のフォローまですることで機会損失を減らせるという提案を、小売に対して行っている。小売が販売機会のロスや在庫のリスクを減らせれば、卸も在庫を適切なタイミングで適切な店舗へ配送でき、売上の向上と返品のリスクを減らすことができる。消費者にとっても「欲しいときに必要な商品が手に入る」というメリットがある。商品を供給するメーカーから消費者まで、全てのプレーヤーにメリットがある仕組みを、卸を通じて実現できないか。これは研究の大きなテーマだ。単にデータを分析し …
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