他社スーパーにディスカウントストアも巻き込み、値下げ競争が激化している英スーパー業界。実店舗・オンラインストア合わせて週に2400万人が買い物をする英スーパー大手のセインズベリーは、テクノロジーを通じて顧客の利便性を高め、競争力につなげようとしている。
480人体制のデジタル・ラボ
ロンドンなどに1200以上の店舗を持つ英国のスーパー、セインズベリーは2014年11月、スマートフォンアプリで買い物の支払いができる実験を始めた。
このアプリでは、あらかじめ利用者にアプリ上で欲しい商品を選び、買い物リストを作っておいてもらう。店頭でそのアプリを開くと、それぞれの商品がどこにあるか、案内する機能もある。利用者は棚から商品を取る際にスマホでスキャンし、そのままアプリ上で決済。クレジットカードかデビットカードのいずれかが選べる。レジの行列で待つことなく、スムーズな買い物ができる仕掛けだ。
来店者の利便性を少しでも高めようという背景には戦略的な目的もある。スーパー最大手テスコや、ウォルマートなどと争いが激化しているのはもちろん、スーパー全体が、アルディやリドルといった欧州に広く拠点を置くディスカウント店に顧客を奪われているのだ。そのため、英国のスーパーはいずれも値下げ競争の渦中にある。セインズベリーも昨年11月、今後3年間で人員削減などを通じ、5億ポンドのコストを減らす施策を打ち出した。そこから1億5000万ポンドを値下げのためにつぎ込むという。
しかし、値下げ施策だけで争うのではジリ貧になってしまう。アプリは、独自性あるサービスを提供して顧客を囲いこむための一環だ。
とはいえ、アプリによる買い物は普及するのだろうか。追い風となりそうなのは、支払い手段の多様化。英国では、消費者が次第に買い物時に現金を使わなくなってきたとする調査がある。英業界団体ペイメンツ・カウンシルの調査では2016年、現金は全体の決済手段のうちの利用率が半数以下となる見通しだ。
現金に次いで利用されているのは …