ダイレクトマーケティングといえば、その要は何よりもターゲットの「リアクション」にある。これまでは問い合わせ件数や資料請求件数、購入数がリアクションの指標だったが、ターゲットの反応はテクノロジーの発達でより精緻に、そして広範に計測できるようになった。アナログとデジタルを縦横無尽に活用し、消費者の欲求をすくいとるダイレクトマーケティングの最前線を、トッパンフォームズ主催のフォーラム「DM week 2015」に見る。

「DM week 2015」の会場では、最新ソリューションの展示も実施。多くの来場者が講演と合わせて訪れていた。
意識下に潜むシグナルをとらえろ
ダイレクトマーケティングは、顧客の獲得や維持のための考え方だ。「我々が知るべきは、人の意思決定を動機づけるものは何か、彼らの意識を集中させ、反応を生み出すために用いるべきツールは何かだ」と、ダイレクトマーケティングの父、レスター・ワンダーマンは言う。
消費者の意思決定を左右するもの、それは理性と感性だ。この2つは相反するようで切り離せない。合理性を意識しながら、無意識に感性でも、自分の判断を評価している。
「[DMを科学する]心へつなげる」をテーマにトッパンフォームズが主催した「DM week 2015」の最終日、1回目の講演に登壇した電通サイエンスジャム代表取締役の神谷俊隆氏は、コミュニケーションは「生産者の発信中心から、消費者の感性的欲求受信中心に進化する」と、自身の考えを紹介した。
「こんな商品があるけれど、欲しい?」と、売り手が買い手に尋ねる時代から、「こんなものが欲しいので、つくってくれない?」と買い手が売り手に尋ねる時代というのは、いまに始まったことではない。もちろん直接的に頼まれるわけではなく、これまでもアンケートやグループインタビューを行い、消費者のニーズを探る取り組みはあった。しかしその回答が本心かどうかは、こうした調査に常につきまとう課題でもある。
本当の欲求は意識下に潜む。自然と発している消費者のシグナルをいかにすくい取るか。有効な手段のひとつは、「脳波」だ。電通サイエンスジャムが提供している「感性アナライザ」は、「好き」「興味」「集中」「眠気」「ストレス」の5つの感性の移り変わりを1秒ごとにグラフ表示できるという。例えば、テレビCMを見せながら脳波を測れば、無意識に「好き」や「興味」が増したタイミングがグラフに示される。どのメッセージが購買の後押しになっているのかが分かるのだ。
ダイレクトメールを見せても同様だ。トッパンフォームズでは、脳波に加えて視線計測装置を組み合わせ、ダイレクトメールのどこを見ているときに、どの感性が反応を示したかを分析している。
意味は同じでも、ちょっとした文言の違い、ビジュアルの違いで「好き」か「ストレス」か、受け取られ方が変わってくる。きちんと伝えねばならないことは「集中」して読んでほしいもの、そこで「眠気」を感じられてしまうような書き方やデザインでは、ダイレクトメールの効果を押し下げてしまう。会場では実際に、トッパンフォームズ マーケティング部部長の菅沼満氏によって分析の様子の動画が紹介された。
こうした分析を繰り返せば、消費者のリアクションを引き出すための改善を積み重ねていけるようになる。客観的分析を活用すれば、これまで以上にコピーライティングやデザインの力が深まっていく。
ダイレクトマーケティングの考え方が提唱され、50年以上が経つ。その間、メディア環境の発展で顧客を「個客」としてとらえ、それぞれに情報を届けられるようになった。ダイレクトメールなど従来の手法で培われた知見に、新たな技術を掛けあわせれば、より効果的な「個客」へのアプローチアイデアが、まだまだ生み出せるはずだ。

脳波計測や視線解析をもとに、ダイレクトメールのデザインの改善点を紹介するトッパンフォームズ マーケティング部部長の菅沼満氏。会場はほぼ満員に。
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