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「買う」5秒前2

「これ、なんで買ったんだろう?」購買の最後の一押しをひも解く

草場滋

『販促会議』の好評連載「『買う』5秒前」をまとめ、加筆した本、『買う5秒前』が2月に発売になりました。私たちの日々の買い物の多くは、最初から計画されたものではありません。多くは買う直前に正体不明の何者かに背中をドンッと押されてものを買っている─。そんな未知なる購買動機を解き明かしたのが本書。発売を記念し、著者の指南役 代表 草場滋氏にインタビューしました。

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『買う5秒前』
草場滋著 宣伝会議刊 1300円+税

僕らは明確な理由があって、毎度商品を買っているワケじゃない。「これ、なんで買ったんだろ?」と自分でもよく分からない。そう、日々の買い物の決定権は「買う5秒前」が握っている。そして、その正体はあまりよく分かっていない─。本書は、そんな未知なる購買動機を解き明かそうというもの。特に新商品やサービスのアイデアを考えているあなた、「買う5秒前」の正体が分かれば、よりアプローチもしやすくなるはず。

─単行本をまとめるにあたり、連載を振り返って改めて気づいたことはありますか。

「買う5秒前」の連載スタートは2009年。前年のリーマンショックで世界中が不況に喘いでいた頃です。この6年、「買う動機」は時代と共に多様化していきました。特にSNSの普及は大きいですね。ツイッターが世間を席巻したのは2010年ごろですから、連載開始当時は、ソーシャルメディアについての視点はなかったんです。

─書籍では、「購買動機」を6つのカテゴリーに分けて、買うシーンを紹介しています。「ソーシャル」もその一つでした。

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62の買うシーンから、「買う5秒前」を分析。ポップなイラストで、微妙な消費者心理もスルスル頭に入ります。

ツイッターやフェイスブックが出てきて、みんなとシェアしあう、リアルタイムに発言することが定着しました。SNSを通じて、いつでも発信できる術を身につけたわけです。これが、ものを買う動機にもつながってきます。例えばパンケーキ。2010年に端を発したパンケーキブームは、5年経ったいまも続いています。この人気、ちょうどSNSの隆盛とリンクするのです。他のスイーツに比べ、パンケーキがここまで長く支持されるのは、単純に「好きだから」だけじゃない。SNSで「パンケーキが好きなワタシ」を発信できることが心地良いからではないでしょうか。積極的にSNSで「好き」と言いたいから、行列にも並んでしまうわけです。

─「ソーシャル」以外の購買動機のカテゴリーには「本能」「逆張り」「ボーダレス」「シンプル」「人間力」がありました。まず「本能」から教えてください。

人間本来の直感、本能にアプローチされると買いたくなることがあります。木の空間にホッとするとか、お相撲さんのような「ふとっちょ」の力持ちに癒される、というのも本能ですね。忙しくても「10分だけならOK」。これも直感へのアプローチ。60分のテレビドラマが苦戦する中で、NHKの朝ドラが好調なのは、尺が短いことにあるのではないでしょうか。2014年にヒットした「ヌードルメーカー」は本格的生めんが10分でできる優れものでしたが、これがもし1時間かかるものだったら1、2回使っただけで飽きていたかもしれません。

─予想に反して逆のことをする「逆張り」で買いたくなるシーンとは?

「逆張り」の一例として、代官山の蔦屋書店の話を書きました。オープン初日に訪れたところ、店の入り口には開業を知らせる看板もなく、マスコミを招いた内覧会も控えていた。ひっそりとオープンさせたんですね。その分、余裕をもって店内を散策できたわけです。同店のターゲットは、団塊の世代前後の人たち。彼らにファンになってもらうために、大々的にオープンを告知して、お祭り騒ぎにするようなことをしなかった。通りがかった人に「開放的な空間ですごく良かったよ」とSNSで発信してもらったほうが、お客でごった返しのレポートよりも興味がそそられる。うまい戦略です。

─「ボーダレス」についてはいかがですか。

男女の壁、大人と子どもの壁、オタクと非オタクの壁、日々さまざまな壁が壊れて、新しい世界が生まれています。ボーダレスで買うシーンとして象徴的なのは、焼き肉の中でもホルモンを好んで食する女性たち、「ホルモンヌ」でしょう。かつては「お父さんの聖地」だったホルモン屋は、安いし、美味しいし、健康にもいいと、女性にウケた。本来、男性向けに開発された商品が、図らずとも女性に受け入れられることがあるんですね。僕もブレーンを務めるホイチョイ・プロダクションズが発売した『新・東京いい店やれる店』もそう。20年近く前にベストセラーになった本の第2弾で、女性をくどき落とすための店選びにこだわったレストランガイドですが、前作とは異なり裏ターゲットである女性の購入者が多かった。世の男性が草食系になり、今は女子会などの影響で、むしろ女性のほうがレストランに関心が高いんです。

─カテゴリー「シンプル」はどうですか?

アイデアや商品開発で一番大切なことがシンプル。考えすぎないほうがいい。アップルのデザインに影響を与えた、ディーター・ラムスというデザイナーは、「良いデザインは可能な限りデザインをしない」と言いました。つまり小さなデザインをするな、ということ。アイデアも同じように、盛り込み過ぎは禁物。コカ・コーラの「Share a Coke」のキャンペーンは、商品のラベルに人の名前を入れる、というシンプルな仕掛けでしたが、自分のために買っていたものを人に贈る、という新たな需要形態をもたらしました。広告を格好良く作ったり、オマケを付けたりしたところで、ある一定期間を過ぎたら、飽きられてしまいますが、これはネーム入りのボトルで商品自体を好きになってもらった好例です。

─「人間力」で買ってしまうシーンとは?

マニュアルとか計算以外の、人間の魅力に惹かれるということですね。分かりやすいのはAKB48。メンバーと握手をしたいために、ファンが同じCDを複数購入することは周知の事実ですが、ファンが10枚も同じCDを買うのは、彼女たちに応援の言葉を贈りたいから。パトロンとなって投資し、支援し、いっしょに盛り上げていく。たまたま消費の対象がCDになっていますが、歴史を紐解けば、音楽にパトロンはつきもの。いまや音楽に限らず、商品や企業をパトロネージュする現象が見られます。そこに気が付いた企業は、ものを売る方法に成功していると思います。レストランの「俺のフレンチ」が人気なのも、単に安いだけでなく「立食で店内が簡素でも、料理は本物」というポリシーに共感するから何度も足を運んでしまう。モノの後ろにある人間力が透けて見えるということですね。買う側と売る側の距離が緊密になるとパトロネージュが起きやすい。「Mr.Children」が、ファン限定の小規模ライブを開いていますが、本当に好きなら、曲を購入するだけでは飽き足らず、ライブに行ってより近づきたくなる。ドーム公演もいいけど、目の前で歌ってくれるなら見に行きたい。その辺りのココロを刺激すると、人は買ってしまうわけです。

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企画に役立つマトリックスも充実しており、巻末には、ヒット商品・サービスの歴史年表付き。引いて、読んで、使う本です。



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テレビ番組『逃走中』の企画原案、映画『バブルへGO!!』の原作協力、雑誌連載「テレビ証券」の監修など、メディアを横断してプランニング活動を行う、著者の草場滋氏。

『買う5秒前』はこちらからお求めいただくことが出来ます。
https://www.sendenkaigi.com/books/new/3597

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