3Dプロジェクションマッピングの認知を世に広めた東京駅の「TOKYO HIKARI VISION」、東京タワーで現在開催中の「TOKYO TOWER CITY LIGHT FANTASIA」をはじめ、映像を使った空間演出を多数手がけるネイキッド代表の村松亮太郎氏。自身の買い物体験や、手掛けた商業施設の空間演出の事例をもとに、買い物客が求める「体験」について聞いた。

「新しい知識や刺激を得ることよりも、自分の感覚を研ぎ澄ませて、時代の気分を感じることを大事にしている」と話す。
─最近買ったものはありますか。
今日着ている「アニエスベー」のダッフルコートです。アニエスが好きで、10代の頃から着ています。このダッフルコートは、最近、取材を受ける機会が増え、服が必要になったので買いました(笑)。
アニエスベーの服は、いつも新宿小田急の店舗で買っています。店長のTさんが好きなんですね。基本的にTさんの店でしか買いません。
─Tさんのどういうところが気に入っているのですか。
そうですね……人柄、接客、センスも素晴らしく、安心して任せられるところでしょうか。洋服を選ぶ時に、僕の好みを的確に拾いながら、かといってTさんの主張を押し付けることなく、センスのいい提案をしてくれる。「これ、合わせてみて?」と選んでくれる服が絶妙なんです。そういうやり取りの気持ち良さもあります。僕は大抵まとめ買いするので、決して安い買い物ではありません。それなら楽しく満足して買いたいじゃないですか。その「体験」が大事なのだと思います。
もっと言えば、Tさんの販売実績が上がるといいなと思いますし。「僕がアニエスベーを好き」ということと、「Tさんから服を買いたい」というストーリーが僕の中で生まれるから、「Tさんの店で買い物する」という行動が起きるのでしょうね。
─では、最近行った場所でお気に入りの場所はありますか。
僕自身が空間演出の仕事をしているので、なかなか一人の客としてその場を楽しむことがないんです。「こういう演出を狙ってるな」とすぐに考えてしまう(笑)。
ただ、どういう店が人を惹き付けるかと言えば、文脈に沿った演出をしている店でしょう。例えばパンケーキが流行りましたが、パンケーキはそれほど美味しいわけでも、店によって味に違いがあるわけでもありません。パンケーキに求められているのは、「幸せ度」だと思うんです。ドーナツも同じような文脈でしょう。その店で食べて幸せが感じられるパンケーキ屋は売れます。逆に、いくらおいしくても、幸せ度が上がらないパンケーキ屋は、きっと売れません。
─ネイキッドが手がけた、東京タワーの夜景に3Dプロジェクションマッピング映像を投影する「TOKYO TOWER CITY LIGHT FANTASIA」が開催中です。夜景にプロジェクションマッピングを投影しようと考えたきっかけは何ですか。
昨年、新江ノ島水族館の「ナイトアクアリウム」という企画で…