ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。
「空気の器」を手に持つ福永紙工 代表取締役・山田明良氏。同社が外部クリエイターと協力しあいながら展開する「かみの工作所」から生まれた人気商品だ。「かみの工作所」は、紙を加工・印刷してできる「道具」の可能性を追求するプロジェクト。ここから生み出される商品はミュージアムショップなどで販売され、多くのファンを持つ。
福永紙工 代表取締役 山田明良 氏(やまだ・あきよし)
1962年愛知県安城市生まれ。アパレル業界を経て義父が経営する福永紙工に入社。代表取締役就任後は、同社が従来から行っていた受注スタイルの事業を継承しつつ、8年ほど前から「かみの工作所」を外部クリエイターと協力しながら立ち上げ、デザイン性の高い紙製品の開発・販売に取り組んでいる。山田氏は「かみの工作所」を単なるブランドではなく、福永紙工とクリエイターたちが協力しあってものづくりを行うための“プラットフォーム”と位置付けている。
テラダモケイ 「1/100建築模型用添景セット No.11お花見編」
桜の木と花が別パーツになっているので、買った人の自由な感覚で桜の花を咲かせることができる。
各地のミュージアムショップなどで販売されている 「空気の器」イエロー×ブルー
形状を自由に変えられる紙の器。広げ方によっていろいろな形になる。利用の仕方については売り手側からは限定せずに、使う人のイマジネーションに委ねている部分が大きい。写真の「イエロー×ブルー」バージョンは、黄色と青色で印刷し、角度により緑色にも見えるようにデザインされている。
経済環境が激変 新たな事業を模索
形状を自由に変えることができる「空気の器」、オブジェとしてもインテリアとしても人気の1/100サイズ建築模型用添景セット「テラダモケイ」。こうしたアートとデザインのテイストを兼ね備えた紙製品が、子どもからシニアまでの幅広い人たちの心を捉えている。
商品を製造・販売しているのは、東京都立川市に事務所兼工場を構える、1963年創業の福永紙工という会社だ。もともとは印刷、段ボール加工、パッケージ製作などの受注生産を中心にBtoB事業を営んできた会社で、特に厚紙加工は得意分野のひとつだ。
同社がアート感覚あふれる商品を手がけるようになったのは今から約8年前だ。その頃、印刷・パッケージ業界は大きな構造変革期にあった。印刷分野ではデジタル化の進展、パッケージ分野ではメーカー工場とともにパッケージ工場も中国へ移転するケースが相次ぐなど、同社を取り巻く経済環境は激変していた。
「幸い当社は大きな業績の落ち込みはありませんでしたが、現状のままで良いはずはありませんでした。そうしたとき …