社会貢献型マーケティングを考える上で、大きな潮流となりはじめた「CSV(Creating Shared Value)」の動き。CSV開発機構の理事長を務める赤池氏に、多くの企業が抱える「公益と事業益を両立させる開発投資」について話を聞いた。
「三方良し」は実現できる
2011年にマイケル・ポーターにより提唱されてきたCSV(Creating Shared Value)という考えは、社会や環境の問題を、事業を通じて解決していこうとするものです。比較的新しく出てきた言葉のように思われますが、「三方良し」の哲学に象徴される「売り手良し、買い手良し、世間良し」の理念に基づく、公益と事業益を両立させる開発投資は、そもそも日本経営の底流に流れる重要なDNAだと思います。
私たちは、2011年に「CSVサーベイランス研究会」、2012年に「CSVサーベイランスネットワーク」を発足させ、異業種企業と共にCSVについてのワークショップや研究会を行ってきました。今年4月には、具体的なCSV事業の構想開発を目的に、一般社団法人として「CSV開発機構」を立ち上げました。
会員企業が意見を交わしていく中で、すでにいくつかのCSVビジネスが生まれましたが、そのシンボリックな事例の一つが、JTB コーポレートセールスによる「EVモビリティ活性化事業」です。
会員企業である日本ユニシスとJTBコーポレートセールスが連携し、環境負荷の少ない電気自動車の充電インフラを、これまで数多く整備されてきた都市ではなく、温泉地などの観光地に導入することで、観光地間の連携や域内の連泊観光を実現し、「交流文化の創造」に貢献しました。宿泊者は手軽な料金でEVを利用しながら観光を楽しむことができ、平日は地元の人々の足として使ってもらえます。
さらに、土日祝日にはEVプチレンタルという新しいサービスの提供も可能になりました。すでに全国で2000弱のEVスポットが設置され ...