訪日客による旅行消費の拡大という、販促担当者にとって大きなチャンスが訪れている。訪日外国人市場の現状と展望、そして訪日客の受け入れや集客を強化していく際の考え方について解説する。
未知の異次元領域に突入した訪日外国人市場
ちょうど一年前の今頃は、観光業界は大騒ぎだった。訪日外国人観光客(以下訪日ゲスト)数1000万人達成を目指し、「達成できなければ、観光庁も日本政府観光局も解体の覚悟」で指折り数え、皆が汗をかいていた。年末にようやく達成し、最終的には年間1036万人が日本を訪れる結果となった。訪日ゲスト数は前年比24%、200万増となったが、それを上回り、なんと前年比36%増を記録したのが「ショッピングツーリズム」による買物消費額だ。その総額は4632億円。1年間に1200億円増の新しい買物消費が、訪日外国人によって日本にもたらされたことになる。
これに驚いた小売店各社は「ショッピングツーリズム」戦略の強化に取り組み、2014年の新年度に突入するや、軒並みインバウンド(訪日旅行)担当を組織化、専任担当者を任命して、宣伝費予算も確保した。とは言うものの、専任担当者は多くても数名。宣伝費予算も数百万円確保できれば良い方で、国内顧客向けとの比較でいえば到底「強化した」と言えるレベルではないものの、まずは第1歩を踏み出したのが14年だったと言える。
そんなスタートを切った14年。訪日ゲスト市場は、さらに拡大のスピードを上げ、未知の異次元領域に突入した。
14年10月末時点で既に13年の訪日ゲスト数、消費額ともに13年を上回った。14年の訪日ゲストによる買物消費額予測は、なんと、およそ7000億円。前年比50%増、2000億円以上の市場拡大を記録することになりそうだ。12年の年間市場規模と比較すると、わずか2年間で倍増。驚異的な拡大を遂げている成長市場だ。これまで訪日ゲストによる国内消費額で最も大きかったのは宿泊代だが、本年はついに、買い物による消費がこれを超えトップシェアに躍り出ることになりそうだ。これからは、日本の訪日観光を支える主役は、名実ともに小売店に移行することが確実なのだ。
これまで数十年間にわたり、郊外大型SCなどに代表される新業態開発、シニアマーケットを筆頭とする新規市場、インターネット革命によるEC、ウェブ広告など、小売業は新しいチャレンジを重ねて、市場の拡大を目指してきた。しかしながら、市場拡大に成功した施策は無く、さらなる競合激化につながり縮小する市場の奪い合いに終始してきたというのが現実だ。
一方、訪日ゲスト市場は、20年のオリンピック・パラリンピック開催という、今後のさらなる成長を担保され、毎年一千億円単位で拡大し続ける急成長市場、注目市場と言える。
しかしながら、未知の異次元領域でどう戦っていったら良いのだろうか。
既に、訪日ゲストが多数訪れている東京・銀座地区では…