最新式のドラム式と並んで二層式が並ぶ洗濯機売り場。高齢者だけではなく合宿所などでのニーズもある。
Deepなファンがいる理由
来店客の半数以上は高齢者で、シニア御用達店舗として流通業界にその名が轟いているのが東京・大田区にある「ダイシン百貨店」。JR大森駅から徒歩で10分余り、商店街の一角にある売り場面積約3300坪の5階建ての大型店。背後には住宅地が広がるが、商圏はJRの線路で分断され決して恵まれた立地ではない。しかし、地域住民の支持はきわめて高い。日常生活に必要な衣食住にかかわる商品約20万点を揃えた独立経営の単独店舗である。
シニアに支持されているのは、よそにはないものがここに来ればあるということ。大箱のマッチ、粉末洗剤トップの大箱、二層式の洗濯機、ポータブルラジオ、金だらい、カセットテープ、大きなヤカンや漬物樽、いまでは百貨店やスーパーに見られなくなったアイテムが、売り場のあちらこちらに置かれている。男性の整髪料では、柳屋のポマード、マンダムの丹頂チック、バイタリスといったロングーセラー商品も取り扱っている。
こうした商品は、大量に売れる売れ筋ではなく、販売効率の悪い死に筋であるが、顧客の要望やニーズがあれば、きちんと売り場に置いて販売する。
必要とする人にとっては欠かせない商品が、強固な来店動機となり、全体の売り上げにも貢献する。極端な話だが1年に1個しか売れなくても、顧客の誘引と囲い込みに大きな力を発揮するのである。高齢者を意識した品揃えからは大ヒット商品も生まれている。ゆったりして履きやすい「モンペスラックス」は年間2万本も売れる。種類も多く選ぶ楽しみもある。こうした商品は団塊世代ではなく、オールドシニアとでも呼ぶべき70代以降に圧倒的な支持を得ている。
高齢者はいったん店の顧客となって、信頼感が生まれると長年にわたって利用してくれる傾向が強く、同店では毎日顔を出す客も珍しくはない。今さら言うまでもないが、採算や効率など売り手の都合でなく、買い手である顧客にとって欲しいものがある、買いやすい「買い場」になっているかが重要なのである。
ダイシン百貨店は創業から今年で67年目を迎えた。最初からシニア御用達の店ではなく、高度成長時代は…