商品やサービスも、プロモーションやイベントも、始まりは形のないアイデアだった。実態のない段階から予算を判断するのは簡単なことではないが、ひとたび、ゴール像を共有できさえすれば、提案する側・受ける側の区別なく、同じ課題に立ち向かうひとつのチームになれる。今回の特集では、大塚製薬の「ポカリスエットを月へ届ける」という前代未聞の企画から、テレビ番組や新聞といったメディアと小売店舗を巻き込んだ謎解きゲーム、沖縄県の地域活性プロモーション、広島市のシティプロモーションといった企画書を掲載。ほかにもオリエンテーションやプレゼンテーションの理想像を探るインタビューや、提案後“ひとり歩き”できる企画書のつくり方を紹介する。確かな輪郭を持ってアイデアを共有し、企画を通すためのヒントが見つかるはずだ。
東京を巡る 謎解きゲーム
テレビ朝日の番組『東京上級デート2』の世界観と連動した謎解きゲーム。AR(拡張現実)技術とアナログを融合させた内容になっており、ゲーム参加者は、ストーリーの登場人物となり、ネット上や日常生活を取り巻くさまざまなメディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など)および街にある店舗や看板などに隠されている「謎」の解明に挑戦し、ゴールを目指した。
熱量を相手に伝える一枚のシート
前例のない企画を通すのは容易でない。
「実施例のない企画だとイメージを見せることができないので、企画を説明する際イメージが曖昧になり絵空事のようにみえてしまいがち。なるべく詳細につくったシート(一番下)とその企業のために特別に作成した企画書を見せることで、企画に対する熱量、本気を伝えて『じゃぁ、うちはいったい何をすればいいの?』と一気に検討段階まで話を持ち上げた」と話すのは「東京上級ゲーム」プロジェクトを企画した電通の蔵本憲昭氏と、プロデュースワーク全般を担当した橘佑香里氏。
プロジェクトの発端は、2月の『東京上級デート2』番組制作時にまで遡る。番組と連動させた企画で、テレビ朝日初の大型イベント「六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」を盛り上げようと構想された。
加えて、日常を取り巻くメディアや街の商店などに参加者が自ら動かなければ謎が解けない仕掛けにしたことで、メディアや企業が生活者との新しい送客方法を模索する狙いもあった。
企画実現のため、参加者に「謎」を提示する場(ゲート)は、流通、サービス、メディアなど街に拠点を持つさまざまな企業の協力を得ることが必要不可欠に。協力を依頼する上で、使用されたのが、企画の全体像が見える一枚のシートと各社ごとに展開イメージを作成した企画書だった。
また、徹底的にエンターテインメント性を追求した内容にしたことも成功要因の一つ。
「自分が面白いと思えるものでないとスポンサーにも参加したいと ...