企業が売り上げを高め、顧客を拡大――その過程にはいつでも販売の現場を大切にする社長の知恵が生きている。本連載では、販売の現場から次々とユニークなプロモーションを生みだす成長企業の経営陣を紹介。その販促の考え方を取り組み方とともに紹介する。
取材・文 上妻英夫(KIプレス)/経済ジャーナリスト メルマガ「いま、売れる方法はこれだ!『上妻英夫の販促大学』」

「回復」の価値を提案していきたいと話す中村氏。
疲労回復や安眠を促すリカバリーウエア
リカバリー市場が拡大傾向の中で活発に動いている。疲労回復分野がスポーツ医学などで注目を集めている中、リカバリーウエア市場に新規参入する大手スポーツアパレルメーカーも相次いでおり、市場が拡大中である。
そうした中で、リカバリーウエアのパイオニアのベネクス(本社・神奈川県厚木市)は、2010年2月の「リカバリーウエア」の発売以来、1着1万円前後の高額商品にも関わらず、14年5月で20万着を売り大ヒットさせている。
同社の武器は特許取得済みの特殊新素材(繊維)「PHT」(プラチナ ハーモナイズド テクノロジー)だ。特許製法でナノプラチナと数十種類の鉱物を繊維に練りこみ、ナノプラチナが発する微弱な電磁波が自律神経(交感神経と副交感神経)のなかでもリラックス状態に働く副交感神経に作用し、筋肉の緊張をほぐし、血流を促し、疲労回復や安眠へと導く。
リカバリーウエア開発は神奈川産業振興センター新規成長産業事業化促進事業の対象に採択され、東海大学との産学公連携事業で誕生した。
日本代表のスポーツ選手やアスリートの間でテスト販売したところ「着るだけで疲労回復や安眠を促す」という口コミが広がった。着用した大手ジムのトレーナーやスポーツ選手からの口コミの波及効果は大きく、休養時専用のスポーツウエアとして販売が伸びていった。慢性疲労のビジネスパーソンや主婦、健康志向の高齢者など、愛用者の幅が急速に広がっており、運動後だけでなく、日常の疲労回復の室内着としても着用され始めている。確実に着用者の口コミ戦略が販売効果を上げているのだ。
11年には新宿伊勢丹メンズ館でスポーツウエア部門の売上№1を記録。13年に、ドイツで行われた世界最大のスポーツ用品の見本市「ISPO(イスポ)」の商品コンテストで「革命的なスポーツギア(一流のアスリートがプレーするための必要不可欠な道具)」と評され、日本企業で初めて、最高賞「金賞」を獲得している。14年2月に、ブースに出展したところ、欧州の問屋やメーカーなど約20社から販売契約の打診、交渉があり注目を集めている。
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