レンタル・シェア文化を浸透させるためのブランディング (後編)
必要なときに必要なだけ利用できる経済性や合理性が支持され、広がりを見せているレンタル・シェアリングサービス。車からファッション、スペース、スキルまでさまざまなカテゴリーでサービスが生まれている。ただ、なんとなく存在は知っているものの、一歩を踏み出すには至っていない生活者が多いのも事実。成長過程のサービスの最新プロモーションを取材した。
業界別販売促進
家電量販店の調理家電売り場が、活況を呈している。少し前まで存在すらしなかった調理家電が、ある商品のヒットをきっかけに数多くの競合商品を生み出し、やがて独立したカテゴリーへと成長していく─。そうやって新しい食文化や食習慣を創出しようとしている調理家電を取り上げ、プロモーションの取り組みを紹介する。
(取材・文 前田はるみ)
日本での認知はゼロ、しかも3万円近い価格にもかかわらず、12年6月の発売から約1年半で、テレビ通販で35万台も売れた調理家電がある。焼肉をはじめ魚介や野菜などあらゆる食品を炭火焼のように赤外線で直火調理できる「ザイグル」である。「調理時に煙が出ない」「油はねしない」などの特長があり、卓上調理を可能にする調理家電として人気を得てきた。
ヒットの立役者が、日本での独占販売権を持つティ・ユー・エフの中野孔生社長だ。3年前に韓国で初めてこの商品に出会ったときは、「日本での商品認知が皆無であり、しかもホットプレートが3000円ほどで手に入る状況では、正直いって売れないだろうと思った」と打ち明ける。ところがある日、中野氏が滞在するホテルの部屋にやって来たザイグル社の社長が、持参したザイグルを使って目の前で魚を焼いてみせた。「煙も出ないし、油はねもしない。ホットプレートで魚がこんなにおいしく焼けるなんて、とすっかり商品にほれ込んでしまいました」と中野氏は話す。
サンプル品を自宅に持ち帰ると、今度は妻がザイグルを気に入り、ローストチキンを焼いたり、正月には餅を焼いたりと、食卓でザイグルが大活躍した。その様子を見ていた中野氏は、12年1月、日本でのザイグル販売を決意。このとき、自分で商品を愛用し、商品にほれ込んだ経験が、ザイグル独自のプロモーションへと発展していくことになる。
日本市場への導入を決めたとはいえ、これまでにない商品だけに、家電量販店で並べておくだけでは売れない。かといって、テレビCM を打つプロモーション予算もなかった。そこで中野氏がとった戦略が、テレビの情報番組や通販番組に取り上げてもらうこと。同年2月、東京ギフトショーへの出展をきっかけにメディア関係者と知り合い、いくつかの情報番組への出演が実現した。しかし、このときは思うような販売実績にはつながらなかった。
ブレークのきっかけは、13年からスタートした複数の通販番組だった。中野氏自らが番組で実演し、商品の魅力を熱く語る。このスタイルが効果的に機能し、「わずか15分間の番組で数千台を売り上げるという、某テレビ通販番組でも伝説に残るほどの売り上げを記録した」(中野氏)という。
通販番組には50回以上出演し(再放送を除く)、その特性を知り尽くしている中野氏は、ザイグルと通販番組の相性の良さについてこう分析する。「まず、ザイグルのように説明が必要な商品は、通販専用番組に向いています。また、そのような番組では商品説明に15分や1時間といった時間を取れるため、お肉が焼き上がる工程をじっくりと見せることができます。反対に、商品説明にあまり時間を割けない番組では、実演部分をVTR などで編集して見せてしまうことも多く、それが視聴者にとっては嘘っぽく映ってしまいます。商品実演の信憑性をどれだけ高められるかも重要なポイントです」
今年4月末には、後継機種である「ザイグルシンプル」を ...