ITジャーナリスト、ifs未来研究所員として最先端のトレンドに触れることの多い筆者が注目販促技術をまとめ、それらが販促領域に与える影響について紹介する。
<文>林信行 ITジャーナリスト/コンサルタント
屋内ナビによる行動分析
国内スマートフォン利用者が過半数となった今年、市場に変化が現れ始めた。国内市場シェア6割以上で、未だに多くのファンを抱えるアップル社のiPhoneを除けば、スマートフォン新型端末への関心は薄れ始めている。その代わりに、今、持っているスマートフォンを日々の生活でどう活用できるかが注目を集めており、自分が所属するライフステージや地域などの属性ごとに口コミでフリーマーケットアプリや写真共有アプリ、ゲームアプリなどいくつかの小トレンドが並走している印象がある。
早くからスマートフォンの販促活用に奮闘し、1社でいくつものアプリを出してきた企業も、一つひとつのアプリを普及させる大変さに気がつき始め、機能集約型アプリに、クーポンやポイントカードなど訴求力のある機能を組み込んで広げる必要性を感じつつあるようだ。
そんな中、アップル社が面白い動きを見せている。これまでいくつかの会社が独自に提供しようと試みてきた屋内ナビゲーションの技術を9月に公開された最新OS、iOS 8に標準で組み込んできた。
iPhone利用者が屋内に入ったのを検出すると、自動的にGPSへの依存度を下げて、その代わりにモーションプロセッサーがWi-Fiルーターとの距離関係や、モーションセンサーを使って半径1メートル前後の精度で現在地を割り出すという機能だ。
現在、アップル社はサンノゼ市の空港やショッピングモールと連携して、この屋内ナビゲーションの実証実験を行なっており、その結果によっては大型商業施設用アプリで定番化する可能性もある。
屋内ナビゲーションは、ただ顧客に訴求したい店舗の情報を届けるだけでなく、どの店舗を利用した顧客がどの店舗に流れやすいかなどの行動分析にも有用で、最近、名古屋のPARCOで行なわれた事例(P.79参照)のようにiBeacon併用でさらに詳細な情報が得られる。
接客用ロボットの台頭
もう一つ、今後注目を集めそうな販促機器に接客用ロボットがある。
ロボットというと、ホンダ社のアシモやソニーのキュリオなどがイベントの集客で活躍してきた。最近では日本科学未来館で、ぱっと見には本物の人間と区別が難しいアンドロイドを導入し、大勢の来場者を集めた。来年にかけては、数年前より各段に進化した音声認識技術により、顧客と自然な会話でのやりとりができるロボットが登場してくる。
ロボットの急速な発展の理由には、店舗などで無線LANを使ったインターネット接続環境の敷設が当たり前になり、ロボット本体を賢くしないでもインターネット越しで情報を処理できるようになったことがある。
そう考えるとロボットも最近、流行の…