スマートフォンの普及で、じわじわと導入が進む「スマート決済」。注文にかかる待ち時間を減らし、買い物にかかる手間を省きながら、顧客IDを得られる同サービスがプロモーションを進化させそうだ。中でも、あらかじめスマホから注文と決済をしておいて、店頭で商品を受け取れるサービスや、来店したことを記録することで決済できるサービスが注目を集めている。
「カフェ ネスカフェ原宿店」のレジカウンター。事前に「ペイパル」のスマートフォンアプリで、来店を記録する「チェックイン」をしておくと、店舗側のタブレットPCに氏名と顔写真が表示される。「ペイパルで支払います」と店員に告げ、店員は顔を確認。注文の合計金額を確認して、支払いボタンにタッチ。財布に一度も触れずに支払いが終わる。
─朝8時15分。駅からオフィスの途中にあるコーヒースタンドでブレンドを買うのが、ここ半年ほどのルーティンだ。店の近くまで来たら「チェックイン」。そのままオーダーし、店頭では「顔パス」で決済する。いつも通り受け取って会社へ向かおうとすると、つい先月入ったばかりの店員の女の子に呼び止められた。「おはようございます。いつものですね。…そうだ、よろしければ、こちらも」。…大判のチョコチップクッキー? 「○○さん、実は今日で100回目のご来店なんです。クッキーもよく召し上がっているようですし、オマケです」「へぇ、ありがとう」「お得意さま、ですから」─。
「スマート決済」が接客の質を上げる
「オムニチャネル戦略には、旧知の店員とやりとりするような体験を、あらゆる場面で消費者にもたらせるようにしてくれる、そんな側面があります」。こう話すのは、支払いにまつわる手間を省く「スマート決済」をけん引するPayPal東京支店のコミュニケーションズ 部長・杉江知彦氏だ。
「来店客一人ひとりのためにカスタマイズしたような、温かみあるサービスは、低価格戦術に頼らずに、他店から頭一つ抜け出るための方策の一つでしょう。マニュアル化の真逆に向かい、個々の顧客にどうパーソナライズするかが、その店のオリジナリティとなりそうです」。
こうしたより人間らしい接客は、従来、経験豊富で来店客のことをよく知る店主や一部の店員といった、「現場のスター」の才能に頼っていた分野だった。彼らの話し方をただマネしても意味がなく、スタッフ間で共有しづらいのが難点だ。
しかし杉江氏は、こうした接客にもスマート決済が役に立つと主張する...