対症療法的なプロモーションではなく、中・長期的に売り上げを高めていくためのプロモーションは、どのように設計すればいいのか。企業のコンサルティングを手がける電通の朝岡崇史氏が、「体験」を軸とした戦術の立て方を解説する。
「体験」は企業にとって不可欠に
これまで、プロモーションを含め、企業のマーケティング活動のゴールは売ることでした。しかし、消費者同士で勧め合う「推奨」のパワーが大きくなった今、ゴールは「どう推奨してもらうか」になっています。もちろん売り上げは業績を示す指標として重要です。でも売り上げを持続させるためには、「推奨」を生む「商品使用前後のポジティブな体験を与えること」を考える必要があります。「ポジティブな体験」はリピート購入につながります。これから国内市場では購買者数が減っていきますが、売上高を保つには、くり返し購入する「ひいき客」を増やすことが差し迫った課題となっています。
「ひいき客」は売り上げ維持だけでなく、拡大にも大きな役割を果たします。食べたり飲んだり使ったり、商品使用時はもちろん、その前後でもポジティブな体験を提供できれば、それは「推奨」という形でソーシャルメディア上に放たれていきます。実際、インターネット上は消費者のあらゆる声であふれています。街で出会ったイベント、コンビニで見つけた面白いモノ、好みのタレントを起用したプロモーションについて、テレビ番組で紹介された飲食店、メイク用品の試供品のレビュー……などなど。これまでも、話題化すれば販売が動くことは実感としてありましたが、ソーシャルメディアはそれを可視化しました。
推奨が「ひいき客」の属するコミュニティで共有されると、新たなユーザーを呼び込み、顧客数が広がっていきます。ユーザーがどんな推奨をしているかを傾聴することで、企業はブランド体験の改善を図ることができるのです。
「ひいき客」を作ることは、消費者と商品にエンゲージメントを築くことです。エンゲージメントと推奨は、互いに寄与する関係にあります。PRコンサルティング世界大手のエデルマンの研究では、他人に勧めることで推奨した本人のエンゲージメントが高まることがわかりました。
エンゲージメントの深さ(リピート率)と推奨数が売上高をけん引していきます。こうして売れ続ける力を生むことこそ、ブランディングにほかなりません。
超えるべき「期待値」は何?
商品体験は、買って実感してくれるのが ...