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ダイレクトマーケティングのフロントライン

徹底した顧客との向き合いが新たな「共創」の次元を拓く

文:大広 ダイレクトマーケティング総合研究所 所長 松浦信裕氏

家庭用コーヒーマシンをオフィス需要開拓に転用して、目覚ましい成果を挙げている「ネスカフェ アンバサダー」。今月は、リテールマーケティングの雄、ネスレが挑戦したオフィス・コンシューマーへのダイレクトマーケティングにスポットを当て、ネスレ日本 ネスカフェアンバサダービジネスユニット 部長である津田氏のインタビューをお届けする。

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ネスレ日本ネスカフェアンバサダービジネスユニット 部長 津田匡保氏

「体験」の場づくりを重ねる試み

順調に販売台数を伸ばしていたバリスタを、改めて「ネスカフェ アンバサダー」という枠組みで事業展開した経緯を聞かせて下さい。

一つには需要機会をいかに捉えるかという視点です。ネスカフェはNo.1ブランドですしバリスタも最も売れている家庭用コーヒーマシンでしたが、家庭外のシェアはわずか。家庭外需要の60%強を占める職場のうち9割がいわゆるスモールオフィスであり、そこに狙うべき需要があると考えました。

もう一つはどうやったら「最も愛されるブランド」になれるかという視点です。東日本大震災の時に、支援として仮設住宅のコミュニティにバリスタを設置させてもらったところ、コーヒーを飲みながら集い語らうことで、つらい状況にあったその場が和んでいった様子を目の当たりにしました。これは単なる消費ではなく、「体験」だと感じたのです。職場やコミュニティなど人が集う場所では、しばしば情緒的な化学反応が起こることがある。そうした場でネスカフェを「体験」してもらえれば、ブランディングの大きな力になるだろうと思いました。やはり、マスだけでは本当に愛されるブランドはつくれません。

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ネスカフェ アンバサダーから送られてくる写真の多くが、バリスタの周りに人が集まって話している様子だという。(左上)
ネスカフェ アンバサダーを招いたサンクスパーティーを全国で実施し、絆を深めている。(右下)

B to BCとでも言うべき需要アプローチの手ごたえはどうですか。

当初はオフィス向けにバリスタをテスト販売しましたが、反応はさっぱり。そこで試しに50台限定で無料オフィスモニターを募集したところ、1週間ほどで1000以上の企業から応募がきました。会社で使いたいけどわざわざ自分がマシーンを買ってまでは......というのが正直なところだったのでしょう。しかし、モニターに手を挙げてくれるような発起人的な人が確かにいるならば、その方に「ネスカフェ アンバサダー」になっていただき口コミ力を通じて職場にネスカフェを広げていけるはず。需要があるなら攻めていくしかありません。お届けする形態などで紆余曲折はありましたが、2012年の秋に立ち上げて約1年半、12万件を超す応募となり、好評いただいています。

また、ネスカフェ アンバサダーの方々から送られてくる写真を見ると、バリスタを囲んで人が集まり、楽しそうに話している様子のものがたくさん。マシンでコーヒーを淹れる間の絶妙な「1分」という間が、オフィスに、職場でのコミュニケーションを促し、それによって元気を与えられるという手応えを感じました。こうしたことは、自動販売機ではできないことです。

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