第4回O2Oグランプリ(*1)大賞受賞企業であるジーユーのスマートフォンアプリ「ジーユーアプリ」は、2012年3月のリリース後、現在までに約360万件ダウンロードされ、販促施策のプラットフォームとして重要な位置を占めている。しかし、意外にも同アプリ上で顧客情報は取得していない。アプリによるオンライン施策において、重視しているのはデータ分析ではなく、実店舗での体験だという。同社のアプリ活用の狙いを聞いた。
(*1) EC研究所が2010年、ネット&リアル市場の健全な発展を目的に設立したアワード。企業の優れたO2O事業に対して表彰を行う。
2月に実施した「バレンタインスクラッチ」キャンペーンでは、アプリ画面上のハートのマークをスクラッチすると5人に1人、商品引換券が当たった。こうした各施策には、加速度センサーやタッチセンサー、画像認識や音声認識などの技術が活用されている。
ブランディングと販促のプラットフォームとして成長
アプリ公開以前の2010~11年頃、ジーユーは来店促進施策として、毎週末に折込チラシを実施していた。これは当時、郊外型店舗が多く、地元のファミリー層を中心にアプローチする目的があったためだ。
しかし、同ブランドがトレンドファッションを扱う方針にシフトするとともに、コアターゲット層も20代女性へと移行。チラシよりも適切なメディアが必要となったため、11年にはメールマガジン会員向けの特別価格を導入し、モバイルによるコミュニケーションを強化していった。
12年に自社アプリをリリースした目的の一つは、新規顧客へのアプローチだ。「メールマガジンを購読しているお客さまは、すでにブランドの購入経験者やファンである場合が多い。新規顧客に来店してもらうきっかけをつくるため、生活者の最も身近なメディアになりつつあるスマートフォンを起点とした集客手法にシフトしていこうという考えがありました」と、同社 ダイレクト事業チームリーダーの萩原将人氏は振り返る。