『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』
辻井啓作 著 阪急コミュニケーションズ 刊 1500円+税
長年さまざまな活性化事業が行われてきたにもかかわらず、繁栄している商店街が全国に1%しかないのはなぜか。商店街の「組合」システムの課題を指摘し、売り上げに背を向け「まちづくり」を目指したこれまでの商店街活性化策のあり方に一石を投じた本。
一時的な商店街への集客ではなく 店が店を呼ぶ状態をつくる
商店街の組合では、さまざまな活性化事業を行っていますが、繁栄している商店街はごく一部です。商店街衰退の理由によく挙げられるのは、大手流通の大型店に顧客を奪われたといったものですが、そうとも言い切れません。
商店街のコンサルティングや調査に携わる中で分かったのは、商店街の組合が実施する活性化事業は、個店の売り上げと必ずしも連動していないということ。本来、活性化事業は、商店街の商売の場としての機能を高めるために行われるべきですが、たとえ商店街でイベントを行い一時的な集客につながっても、店自体の魅力がなかったり、イベントで集めた客層と店の客層が異なったりすれば、売り上げは元に戻ってしまいます。しかも商店街の組合が行政の補助金を受けて行う活性化事業は、売り上げよりも地域貢献的な「まちづくり」を意識したものが多い。また事業を担う組合の組織も、不動産賃貸など商店の売り上げ以外から収入を得ている人たちの集まりとなっているのが目立ちます。実際、自身の店を拡大しようとする若手経営者に話を聞くと、そのほとんどが商店街という場所やそこでの取り組みが自店のビジネスに影響を与えるものだとは見ていませんでした。