
イラスト:高田真弓
昨年12月にオープンした蔦屋書店函館店。木を基調とした解放感のある空間は、来場者の心を落ち着かせる。
昨年12月、北海道は函館に蔦屋書店がオープンした。同じタイプの書店としては、代官山に続く2店舗目になる。
目を引くのは、その圧倒的な広さと、全体に"木"を基調としたデザインだ。2階建ての吹き抜け構造は解放感に満ち、木のオブジェがあったり、本物の暖炉があったり、テーブルや椅子が各所に配置されたりと、くつろげる空間になっている。もはやそこは単に本を買いにくる場所ではない。人々は本棚の散策を楽しみ、コーヒーを飲み、友人らと語らう。いわば、本の森である。それにしても―なぜ人々は木に囲まれた空間に身を置くと、ぬくもりを感じるのだろうか。
そういえば、近年、欧米を中心に木造建築が見直されていると聞く。昨年、ストックホルムの住宅設計コンペでは、34階建ての木造高層マンションが提案されたという。実現すれば、2009年にロンドンに完成した9階建ての木造高層ビル「マレイ・グローヴ」の記録を大幅に上回る。ほかにも、カナダのバンクーバーやアメリカのシカゴでも30階建ての木造高層ビルの計画があり、今や木造建築は世界的なトレンドになりつつある。
その理由を建築家たちは環境問題と語るが(木造だと鋼鉄やコンクリートに比べて二酸化炭素の排出量が少なく、建築廃棄物も大幅に減る)、理由はそれだけだろうか。そこで働き、暮らす人々がぬくもりを感じられるなどの心的効果もあるのではないだろうか。
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