この連載も今回が最終回。最後に、ウォルマート チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)スティーブ・クイン氏の言葉を紹介したい。“顧客側への権限移譲が加速し、顧客は自らが運転席に座るための道具を獲得してしまった。企業にとっては痛みを伴う大変な時がやってきた......しかし、それはすべてのマーケターが顧客中心(Customer Centric)に立ち返ることを意味している”
図:パーソナライゼーションに呼応したO2Oを達成するための「五つのプロセス」
劇的な消費者の行動変化:常時オンラインの状態
日常生活の中でiPadを活用している、という人も多いだろう。では、何年使用しているだろうか?長く使っているように感じるが、iPadは2009年にまだこの世に存在していなかった。iPhoneの発売も07年だ。その後のわずか5、6年で携帯電話、とりわけスマートフォンがあっという間に世界中に広がり、消費者の行動を劇的に変化させている。米国では13年に既にスマートフォンの普及率が74%、タブレットの普及率が52%となり、14年にはそれぞれ80%、64%に伸長すると見込まれている。携帯電話とスマートフォンは機能においての重なりこそあるものの、消費者を常時「オン」の状態にするか否か、という点で大きな違いがあるのだ。
今やすべての消費者が常に「オンライン」でいることが新しい「常識」となっている。本連載開始からの1年間を振り返っても消費者の置かれている環境は日々刻々と変化している。そして、その環境の中で知らず知らずのうちに消費者の行動自体も変化している。例えば「歩きスマホを狙ったひったくりが横行」というのは、これまで無かった犯罪。これからは24時間、365日、常に「オンライン」の環境にある中、各人が自分の都合に合わせて「オン」と「オフ」を断続的に切り替えながら生活していくという行動パターンに大きく変化していくだろう。こういった消費者の行動様式の劇的な変化がマーケター、メディア、メーカー、小売企業の消費者へのアプローチのあり方を変えていく大きな要因になっていく。