企業によるキャラクタータイアップは、従来から販促手法の一つとして行われてきた。しかし近年、その取り組み方は多様化している。生活者のライフスタイルや消費動向の変遷(へんせん)を受け、今求められているキャラクタータイアップとはどのようなものなのか。長年、キャラクターコンテンツの世界を見てきた小池一夫氏に聞いた。
1972年に放映された「ボンカレー」のCM。出演者の装いやスタジオセットまで、パロディ元の映画『子連れ狼』を忠実に再現し、音楽もわざわざオリジナルをアレンジして使うなどの“原作への敬意”があったからこそ、作品のファンにも受け入れられ、ヒットCMとなった。
「ワッペンキャラクター」は
ファンからも受け入れられない
私はいつも、「キャラクターが起(た)っていないと、そのコンテンツはヒットしない」と言っている。起っていないとはどういう意味かというと、「キャラクターの個性を生かせていない」、あるいは「キャラクターへの愛が足りない」ということだ。キャラクターとはそもそも「人間のようなもの」なのである。キャラクターの中には、人の手で創られたものもあれば、「キャンペーンキャラクター」など実在の人物をキャラクターと呼ぶ場合もあるが、いずれも、メディアを通じて人の心に働き掛け、メッセージを伝える存在のことを指す。
創り手はキャラクターを創り、動かすことでファン(ここでは読者や視聴者、ゲームのプレイヤーなどを「ファン」という言葉でまとめる)の心を動かす。そして、キャラクターを通じて創り手の“魂”に触れたファンは、実在の人間に抱くのと同様の、あるいはそれ以上の感情を、キャラクターに対して抱くようになる。この“魂の交わり”とでもいうべきものが、キャラクター・コミュニケーションの正体なのだ。