販売促進の専門メディア

           

トップの現場力

米ギフト・料亭を営む八代目儀兵衛の現場力は「人間力」と「リーダーシップ」

八代目儀兵衛 代表取締役社長 橋本隆志

東京・銀座の「銀座米料亭 八代目儀兵衛」では、あえて“京都”を前面に出さず、入った時に京都の雰囲気を感じられるようにしている。その一つが、来店客送迎のときの一言。「“おこしやす”“おおきに”という言葉だけでお客さまが感じる空気感はガラッと変わります」(橋本氏)。

色とりどりの風呂敷で包まれた米のギフト「十二単」シリーズが印象的な、八代目儀兵衛。もともと京都の老舗米屋だったが、お米の価値観を変えようと、ギフト市場に進出。いまでは内祝いなどで人気となっている。通販のほかにも、京都・祇園と東京・銀座に米料亭を出店し、顧客との接点を設けている。「私たちの仕事は文化を伝えること」という同社の現場力とは?

貴社にとっての現場力とは?

橋本隆志氏
八代目儀兵衛 代表取締役社長

同志社大学商学部を卒業後、大手通販会社、米問屋での勤務を経て、2006年に八代目儀兵衛を設立。産地や銘柄だけでお米を選ぶのではなく、その年その季節に合わせ、「美味しい」と感じられるお米を提供するお米ギフト事業を始め、京都祇園・東京銀座に、アンテナショップとしての飲食展開、産学公が一体となった自然循環農業を実施するなど、川上から川下まで幅広い活動で業界を盛り上げるお米プロデューサー。

当社における現場力とは何かを考えた場合、「人間力」と「リーダーシップ」の二つがキーワードだと思います。我々はネット販売が主で、売り上げの9割を占めています。京都や東京にある米料亭の売り上げはまだ1割ほど。ただ、リアル店舗があり、そこで実際に食べることができるというのは大きな力となります。あとは、そこからいかにネットの店舗に行っていただけるか、その仕組みが重要です。最近注目されるO2Oは「Online to Offline 」の意味ですが、当社の場合OffからOnという逆の流れのO2Oを非常に意識しています。売り上げの多くがネット通販ではありますが、だからこそ、リアル店舗で起こるさまざまなことが現場力を活性化させると考えています。

ネット通販だからこそ、リアルな場から得られることが大事ということですか?

そうですね。リアル店舗でのお客さまの反応から見えてくることはたくさんあります。ただ、それは店舗に限ったことではありません。ネット上では、特に口コミやレビューの中にたくさんのヒントがあります。そのヒントを商品・サービスに反映させることで、ここまで成長できていると思っています。もちろん、お客さまの声を100%そのまま実現することが顧客満足につながるわけではありません。意見を参考にしつつ、自分たちができることを考え、取り入れるべきことを見極めるようにしてきました。それらを、スピード感をもって行う。我々が一番の強みとしているのが、中小企業ならではの、この“スピード感”です。そういう意味では、これも現場力の一つと言えるかもしれませんね。

スピードを高めるためにも、私自身、社員一人ひとりと直接向き合って仕事をするようにしています。だから、「こんなことをしてはどうか」という提案があれば、それをすぐに判断します。それが社員のスピード感覚を養っていると思います。また、直接向き合うことで、私の考えが正確に社員に伝わるようになっています。

社長の下がフラットな組織であることが、先ほどの「リーダーシップ」と「人間力」を養うことにつながっているのでしょうか?

例えば、新入社員であっても、実力をつけて「プロジェクトのリーダーをやりたい」と自ら手を挙げたら、年齢に関係なくその人に任せるようにしています。そのプロジェクトが大きく成長して会社の軸になれば、その人の成長ステージも大きく上がります。誰にでもチャンスがあるということが「リーダーシップ」を鍛えると思っています。

一方で、そういう実力主義は社内の雰囲気を悪くしがちとも言われます。そうならないように大切なのが、もう一つの「人間力」。だから「リーダーシップ」と「人間力」の両方が現場力として重要なのです。

また、実力主義でもギスギスした感じにならないのは、京都の会社ならではの雰囲気かもしれません。例えば月桂冠さんをはじめ、京都の企業の多くは、いたずらに企業規模を拡大することを良いと思っていません。そうではなく、一つの商品を愛し続けて、長く続けていく、社員を家族のように大切にする、という傾向があります。当社もそうしたことを無意識に踏襲しているのかもしれないですね。

「人間力」をより磨いていくために行っていることは?

例えば社員を指導すべきことが生じた時、具体的に「こうした方がよい」と言う前に、「なぜその考えに至ったのか」を必ず聞くようにしています。理由は、その人の考え方そのものが、我々が求めていることと違っている可能性があるから。もし、考え方のどこかでボタンの掛け違いが生じてしまっていたのなら、まずそこを理解しなければ、具体的に指示したところで意味はないでしょう。そういう場合は、思い切って人間的なところに踏み込んで話をするようにしています。もちろん、そうしたことを言われるのはショックだと思いますが、たいていの場合、自身でもなんとなく違っていることに気付いていることが多いですね。よく、「社員の成長が会社の成長」と言われますが、まさにその通りだと思います。

あとは、「ストレングス・ファインダー」という心理テストを用いて、社員自らが自身の強みを知り、さらにそれをほか社員に公開するようにしています。例えば私の場合「自我」「競争力」が強いと出ているのですが、そのほかにも「協調性」「創造性」などいろいろな項目があります。これが分かることで、その人の強みを尊重して、その人が仕事で輝けるように仕向けることができると思っています。また、自分で自分を分かることと同じように、人に自分を分かってもらうことは大事です。まだまだ少人数の会社だからこそ、お互いのことを分かっていないとうまく行きません。強みが社員に公開されているのは、相互理解を深めて仕事をスムーズに進められるという意味合いも大きいですね。

あと46%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

トップの現場力 の記事一覧

米ギフト・料亭を営む八代目儀兵衛の現場力は「人間力」と「リーダーシップ」(この記事です)
「君は崖っぷちをのぞいたのか」145店舗を擁する「住商ドラッグストアーズ」トップのチャレンジ精神
「専門店スタッフは教師でもある」ICI石井スポーツの接客力
「青山フラワーマーケット」展開企業のトップが考える「現場力」
「サーティーワン」チェーン展開40周年、楽しい店づくりの秘訣は"伝える力・聞く力"
社員はworkerではなく、感動を与える「player」であれ

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
販促会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する