経済産業省が設置する消費者相談室で、2003〜12年度に受け付けた消費者からの相談件数。03年度の1353件に対し、12年度は598件と大幅に減り、前年度比では3.7%のマイナスとなった。船津氏の話す通り、企業と消費者との接触がすぐに評判として広まる現代では、一昔前のような悪質な電話営業などは減っていると考えられる。
出典:経済産業省「平成24年度の消費者相談件数の速報」2013年5月27日発表
コールセンターがコンタクトセンターと呼ばれるようになった背景には、企業と顧客との接点が電話だけではなくなり、マルチチャネル化した時代状況がある。当然そこでは、企業が提供するサービスにも変化が求められているはずだ。テクノロジーが急速に進化する中、コンタクトセンターが置かれる現在の状況と、求められる役割の変化について、業界を俯瞰(ふかん)する日本コールセンター協会の会長に話を聞いた。
現代のコンタクトセンターに求められる役割
1. 情報量やリテラシーに差のある消費者への幅広い対応力
2. デバイスの多様化に対応した一元的なサービス提供
3.「顧客満足の向上」の本気の実践
技術革新のスピードに対するサービスの遅れが課題
─企業活動において、コンタクトセンターが担う役割はどのように変化していますか。
まず、特徴的な変化としては、問い合わせや注文に対応するインバウンド業務だけでなく、セールスにつながるアウトバウンド業務を担わせる企業が増えているということです。その背景には、ウェブテクノロジーの進化により、企業のセールス活動の負担が大幅に軽減されたという状況があります。例えばCRMやビッグデータの活用が推進されることで、見込み顧客を絞り込む、重要顧客を囲い込むなど、従来よりもかなり細分化したアプローチが可能になってきました。そのアプローチ部分の一端を、コンタクトセンターのアウトバウンド業務が担っています。
また、例えば電話をかけて新商品を案内すると、受け手の消費者にとって負担になる場合もあり、それは企業活動にとってもマイナスでした。しかし今は、ウェブサイトを開設するなどしてインターネット上に情報を置いておくだけで、興味のある消費者が能動的に情報を取りにきてくれる。そこに併せて電話窓口を設置することで、消費者に安心感を与え、ウェブサイトによる情報発信の効果を高めることができます。
これはインバウンドでも同様です。例えば、企業はウェブサイト上にFAQ(よくある質問とその回答)を用意することで、消費者がわざわざ電話しなくてもおそらく6~7割の問題を解決できるようになったはずです。そこで残った3~4割の複雑な問題にリソースを割き、丁寧に対応できるようになったことで、顧客の深い理解促進や、満足度向上につなげることができます。