「高くても欲しい」と顧客が集まるサービスの好例を表面的に真似しても、一時的な効果しか期待できない。いまの時代に安売りせずに、顧客に特別な価値を感じてもらうには、ビジネスの社会的意味に立ち返り、独自の「世界観」を打ち出す必要があるとコンサルタントの村松達夫氏は指摘する。ここでは値下げしないと売れないと思い込んでしまう人に向け、世界観が価値を生み出すメカニズムを解説する。
もはや商品では差異化はできない
もはや商品で差異化を図るのは難しい、というのは誰もがうなずくところだろう。ではこれからの企業はどのように価値をつくっていったらいいのか。値下げ競争から解放される方法はあるのだろうか。そのヒントになるのが、近代マーケティングの父、フィリップ・コトラーが提唱する「マーケティング3.0」の考え方だ。ここでは分かりやすく車の例で説明しよう。
戦後の高度成長期にはとにかく新車を作れば売れた。これがマーケティング1.0だ。しかしバブル期にモノがあふれると、リクライニングシート付きだの、ツインカムエンジン搭載だのと顧客のニーズに応える付加価値を提供し、消費者志向で差異化を図るようになる。これがマーケティング2.0だ。
しかし顧客のためとあまりにも連呼しすぎたため、その薄っぺらさにうんざりし、小手先の付加価値の訴求は通用しなくなってきた。そこで注目されてきたのが社会志向。単に顧客にとって良いかどうか、ではなく商品を買うことが社会のためになるか、という観点だ。これがマーケティング3.0。その典型例が、乗ることが環境に配慮しているエコカーである。
このように、買うことが本当に社会のためになっているかを消費者が重視するようになる中で、各企業が世の中にとって有益で、かつ魅力的な「世界観」を明示することが、価値の創出につながっているのである。