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消費増税への処方箋

「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」に見る、価値を生むコラボの条件

兵庫県立大学 経営学部 川上昌直教授

商品・サービスの価値を高めるための施策については、何も自社だけですべて実施する必要はなく、他社とコラボレーションするというのも一つの手段だ。ここでは、コラボレーションによって価値を高めるための考え方を事例にもとづいて解説していく。

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顧客価値をつくるという発想

企業の目的が「顧客を満足させること」である限り、どのような製品やサービスも、「顧客価値」を常に高め続けなければならない。ここで、顧客価値は、その製品やサービスに対して顧客が認識した支払意欲(WTP:Willingness to pay)が、企業が提示した価格を上回るときにのみ生み出されるものである(図表1)。できる限り価格を下げない方策を取るとするならば、製品やサービスのWTPを高めなければならない。その方法にはさまざまなものが考えられるが、まずは現在の製品・サービスの便益を高めることが肝要である。

そうした活動をよりスピーディーに、かつ実行可能なレベルで行っていくために、コラボレーションに大きな期待が寄せられている。他社(他者)の力を借りるという選択肢を上手にこなせる企業ほど、こうした価値づくりをモノにしている。誰と組むのか、誰がこれまでなかった自社製品の価値を高めるのか、というテーマの重要性に気付いた企業、そしてそれをどのようにマネジメントするのかを問題・関心としている企業が、価値づくりをモノにしている。

価値づくりのベースとなる顧客の活動チェーン

コラボレーションによって成果を生む際の有力なフレームワークが、「顧客の活動チェーン*」だ(図表2)。これは、顧客が製品を見つけ、使用し、自身の用事を解決し、さらにそれを継続しながら、価値を見出していくポイントを可視化したものである。そもそも顧客は製品そのものを評価しているのではない。その製品が、自分の用事を解決してくれるものであるのかどうか、それを購入するときの問題や、使用するときの煩わしさ、さらには用事を解決し続ける、最後にはそれを廃棄するというところまで含めて製品を評価する。そして、再び購入する段階になれば、そのすべてをもう一度反芻(はんすう)して、支払意欲(WTP)を評価し直すのである。

このように製品をとりまく周辺事情を考慮して、どの活動を他社に任せるのか、それを誰に任せるのかが、価値づくりのためのコラボレーションのポイントである。

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