「佐世保バーガー」「うどん県」「ひこにゃん」のPR戦略などを手がけてきたPRプロデューサーの殿村美樹氏は、「商品を取り巻く人や場所、時について、時代が求めるところへズラすだけで、一度売れたも のなら必ずまた売れる」と言う。二つの事例をもとに、新しい価値を生み出す「ズラしの手法」を解説する。
ベビー用品をペット愛好家へ
ベビー用品の「抱っこひも」をペット愛好家向けにした商品「ドッグスリング」。少子化時代であっても、女性の本能はなくならないことをポイントに「今、母性本能はどこへ向いているか」を考え、ペット市場で販売するアイデアが生まれた。
今ある商品を、売る人や場所、時を少しズラして新しい光を当てる。この「ズラしの手法」を使って、売れるようになった事例を紹介しよう。「ズラす手法」を身に付ければ、たとえ窮地に陥っても「次の一歩」を見つけられるはずだ。
CASE1 ターゲットをずらす
ベビー用品をペット市場で売る
今春「子どもの割合が総人口の13%を割り込んだ」というショッキングなニュースが全国を駆け巡った。子ども用品を扱うメーカーや商社にとっては、何か手を打たなければ、企業の存続も危ぶまれる事態になりかねない。
そんな時、赤ちゃんを抱くための「抱っこひも」を製造販売する「AKOAKO-STUDIO」(大阪府)の高木千賀氏から相談を受けた。同社の人気商品「アコアコスリング」の売り上げが横ばいで、今後の展開のために、次の手を打ちたいという。「アコアコスリング」は育児雑誌の人気商品ランキングにも取り上げられ、ネット通販で何度も表彰されるほどの人気を誇る。だが、赤ちゃんの数が減り続ける以上、同じ市場で頑張っても、同業者との競争が激化するだけ。だったら違う市場を狙ってみたら......。「ズラしの手法」で考えるとそんな結論が出た。