社会貢献を戦略的に経営に取り入れる企業が増え、さらにはプロモーションプランを考える際の選択肢としても広がりつつある。その潮流は、消費者の価値観の変化に対応したものだ。もちろん、ただ社会貢献を取り入れれば売れるというわけではない。今、なぜ社会貢献型のプロモーションが注目され、どのようなプロモーションであれば効果を発揮するのか。「儲かるCSR」を提唱する竹井氏に聞いた。
社会的価値の創出が企業の成長の条件となる
「社会貢献型プロモーションは効くのか」。これはある意味で、マーケティング業界の最もホットな話題ではないかと思う。
筆者はマーケティング・コンサルタントとして30年以上活動してきた。5年ほど前からは社会貢献に特化して、CSRやCRM(コーズ・マーケティング)のコンサルティングを行っている。そのため企業社会における社会貢献に対する空気感は、よく分かっているつもりだ。端的に言えば、現在は社会貢献にまったく関心がない企業(懐疑派)と、関心の高い企業(推進派)が混在している。
今回は、そのような視点から、社会貢献型プロモーションの現在と可能性を伝えたい。
まず、全体的な傾向としては、今後の企業戦略やマーケティングは社会貢献型が主流になる。というより、すでに議論の中心はそこにある。
2006年に、"競争戦略"の大家であるマイケル・ポーターが「戦略的CSR」の概念を発表。11年にはこの概念を進化させた「CSV」(Creating Shared Value=共通価値の創造)の概念を提唱した。これは、かいつまんで言えば、これからの企業は社会的価値を生み出さないと成長できないということだ。
CSVの登場により、社会貢献はこれからの企業の成長戦略の核であるという見方が広まった。11年には、欧州委員会がその政策文書の中で、「今後のヨーロッパ経済の成長のためにはCSVを最大化すべし」と明言したことも、この動きを加速させた。
いまやCSVはCSRの枠を超えて、企業戦略の最もホットな課題となり、キリンのように「CSV本部」を設置する企業まで登場した。マーケティングとしてCSVに取り組む企業も増えてきて、多くの企業のCSRが、CSVの文脈で捉え直されている。
例えば、パナソニックはCSRの一環として、自社の技術者を途上国のNGOに派遣し、現地ニーズを技術の力で解決する「留職」という取り組みを行っているが、これもCSV的な取り組みだと言える。途上国の一部は急速に経済成長しており、その中でも特に今後最大の市場として期待されているのがインドだ。パナソニックはそのインドで、史上初めてサリーが洗える洗濯機を発売して大ヒットさせている。「留職」プログラムはまだ2年目で大きな成果は出ていないが、今後、インドにおける洗濯機のようなヒット商品が、ここから生み出される可能性は高い。
効果があるのは3年目まで
飽きられないための進化が必要
以上のように、経営戦略、マーケティング戦略においては社会貢献がすでに重要な要素となっているが、販売の最前線ではどうだろうか。