授乳姿を見せる広告がアメリカで続々登場する背景とは?
昨年秋からセクハラや「#Me Too」告発など、性を取り巻く問題で揺れる米国。今年、前半「授乳する母親」をフィーチャーした広告が相次いで出稿され、話題となっている。
先進企業の最新事例を現地から松本泰輔氏がレポートします。
昨年秋からセクハラや「#Me Too」告発など、性を取り巻く問題で揺れる米国。今年、前半「授乳する母親」をフィーチャーした広告が相次いで出稿され、話題となっている。
2月14日フロリダ州の高校で17人が殺害された銃乱射事件以来、アメリカではさまざまな議論が沸き起こっている。その中でも「Toxic Masculinity(毒々しい男らしさ)」は数十年前から指摘されている問題であり、銃乱射事件が起こるたびに再燃する事態となっている。
古くからユニフォームに企業広告を入れている欧州サッカーとは対象的に、米4大プロスポーツ(NFL/MLB/NBA/NHL)はオールスター戦やチャリティー目的など特別な機会を除き、シーズン中のユニフォームへの広告は禁止されていた。しかしNBAは今シーズン(2017-2018)その左胸に企業広告を解禁(1)。スポーツ界はもちろん各業界に衝撃を与えている。
2月4日にミネアポリスで開催される第52回スーパーボウル。広告業界では数カ月前から盛り上がりを見せているが、今年は開催前から社会現象となっているBud LightのCM「Dilly Dilly」(1)が注目を集めている。
10月初旬、ニューヨーク・タイムズ紙とニューヨーカー誌がスクープした映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラ問題は「被害者は声を上げよう」と女優アリッサ・ミラノの呼びかけによりSNSで世界を巻き込む大事件となった。広告業界は経営陣の大部分を白人男性が占めている件で行政から改善命令を受けているほどで、セクハラも以前から問題となっていた。そして今、広告業界内部から改革を求める声が拡がっている。
6月17日、アマゾンは大手スーパーマーケット「ホールフーズ(WF)」(1)を137億ドル(約1兆5000億円)で買収すると発表した。Eコマースの巨人とオーガニック・スーパーマーケットは一見異色のカップルのように見えたが、背景には深い意味が隠されていた。さらに8月28日に買収手続きを終えたアマゾンは、その日から一部商品を値下げし、アメリカ中を驚かせた。本号ではWF買収以降のアマゾンと競合各社の動きを整理してまとめた。
昨年5月YouTubeが導入したスキップできない6秒動画広告「バンパー広告(Bumper Ads)」は、今ではSNSに欠かせないツールになっている。これは、複数のアンケート調査においてデジタル・ネイティブであるZ世代(10~20代)やミレニアル世代(20~30代)は「どんな手を使ってでも広告を避けようとする」という結果が出ており、何とか彼らに見てもらえないかと試行錯誤の末にこの形態に落ち着いたものである。
9月号既報の通り「Z世代(10~20代)」「ミレニアル世代(20~30代)」に圧倒的人気を誇るSNSの「Instagram」と「Snapchat(2)」。相手に読まれると10秒で消えてしまう写真投稿や、24時間で消える動画機能を持つSnapchat「ストーリー」は、後に残らず気軽に投稿できるのが人気となった。
「Generation Z(Z世代)」は1990年代半ばから2000年代前半生まれの世代を指し、省略して「Gen Z」または「Gen Zers」と呼ばれる。年齢で言えば現在13歳の中学生から22歳の大学生くらいまでで、その上が20代半ばから30代後半の「ミレニアル世代(Generation Y)」となる。Z世代はすでにアメリカ人口の25.9%を占め、現時点でアメリカの最大層だ。
「母の日」に比べて影の薄い「父の日」だが、実際には多くのアメリカ企業が5月下旬から「父の日」キャンペーンを行う。National Retail Federation(全米小売業協会)のアンケート調査によると、2017年の「父の日」における各世帯の平均支出は前年対比7%増の134.75ドル(1万4876円)、全米総支出は同調査開始以来15年間で最高の155億ドル(1兆7112億円)と予測されている(「母の日」総支出はその1.5倍の236億ドル【2兆6054億円】)。