認知と購買を単独で捉えなくなった「売り」は良質なブランド体験の先にあるもの
認知だけでは企業の最終目的である「売り」にはつながらない時代に入社した広告・マーケティング業界の若手プランナー。彼らは日々どのようなことを考えてクリエイティブに向き合い、自らの役割をどう認識しているのか。大広の花田光希氏、読売広告社の難波江侑矢氏の対談から探る。
「認知だけでは売れない」と言われる時代。モノにあふれ、生活者との接点やメディアも多様化していくに伴って「知ってもらう」ことがストレートに売れることにはつながりづらくなりました。そこで再注目されているのが「アクティベーション」という概念です。「認知」獲得のその先、ミッドファネルの態度変容、さらにロウワーファネルのコンバージョンまで、消費者の行動を具体的に喚起するプランニングが求められるようになっています。これに伴い、「認知」獲得に主眼を置いていた広告クリエイター、PRプランナーの仕事や役割も変化しつつあるのではないでしょうか。
一方で、「販促」施策だけでも売れにくくなっているのも事実です。プランナーには、ブランドコミュニケーションで培ったブランドイメージや世界観をしっかりと売り場やキャンペーンにも落とし込み、両者に齟齬がないように一貫した統合プランニングが求められています。
ともすれば、「広告」と「販促」の垣根が曖昧になっていると言われるのも、どちらか片方だけではモノが売れなくなっているからだと考えられないでしょうか。本特集では、認知獲得に長けてきた広告会社、PR会社、クリエイティブエージェンシーと、販促やアクティベーションを得意とする企画制作会社に取材。今だからこそプランナー、クリエイターに求められる「売り」への意識とスキルについての意見を聞きました。
認知だけでは企業の最終目的である「売り」にはつながらない時代に入社した広告・マーケティング業界の若手プランナー。彼らは日々どのようなことを考えてクリエイティブに向き合い、自らの役割をどう認識しているのか。大広の花田光希氏、読売広告社の難波江侑矢氏の対談から探る。
ジェイアール東日本企画の郡司淳氏によれば、そもそもコピーライターの仕事とは言葉の力で「人を動かす」ことだ。本特集は「売り」につなげるまで求められるようになったというテーマだが、実はその“役割”は拡張しているわけではなく、“役割”を変えずに“視野”が拡がったという仮説も浮かび上がってきた。
読売広告社は2023年4月から、「クリエイティブセンター」を「統合クリエイティブセンター」に改称。クリエイティブ部門とアクティベーション系統を担当していた部門が統合されるかたちとなった。そんな同社は「アクティベーションプランニング」「アクティベーション」という言葉をどう定義しているのか。
大広が2024年4月に新設したのは「ブランデッドダイレクト局」という部門。名前の通り、ブランドコミュニケーションとダイレクトマーケティングを統合し、一気通貫でクリエイティブを企画・制作することを担う。まさに「売り」への意識が求められる同部門では、認知から購買、その先のCRMまで、フルファネルで対応できるクリエイティブディレクターの育成を進めているという。
ファンづくりを促す企画も「売り」に繋がるとして、販促やアクティベーションだと捉えられることが増えた。実際にADKクリエイティブ・ワンに2025年1月1日付で設立される新組織「デジタル&アクティベーション・プロデュース本部」もブランドのファンを育成することで「売り」を創ることが目的の1つ。そんな中で求められるのは、オンオフ統合かつフルファネルでコミュニケーションを設計できるクリエイターだ。
かつてセールスプロモーションを担う組織とマス広告を担う組織は分断されていた。しかし、いつからかその垣根は曖昧になり、今ではクリエイター全体に「売り」「顧客化」にコミットする意識が求められている。なぜ、この垣根はなくなりつつあるのか。いつからなくなったのか。セールスプロモーションやアクティベーションプラニング出身で、現在クリエイティブ局の局長補佐を務める深澤拓哉氏に考えを聞いた。
広告会社、クリエイターが担う役割が広がっていると言われるなか、電通は総勢70名以上のクリエイターが集う横断組織「フューチャー・クリエーティブ・センター(Future Creative Center)」を設立。広告の枠を越えて、企業の未来価値向上をクリエイティビティでサポートする同組織に所属する佐々木 祥氏に、クリエイターがクライアントの事業成長にコミットする必要性を聞いた。
「広告」と「販促」の垣根が曖昧になっていると言われることが増えた。両者のKGIが「モノを売ること=生活者の行動を促すこと」だと捉えれば、なおさらその“曖昧さ”は色濃くなっていくとも考えられる。そんな今だからこそ、「販促」とは何か? を改めて見つめ直すことが必要なのではないだろうか。本記事では「販促コンペ」の最終審査員を務める奥谷孝司氏と嶋野裕介氏が議論。拡張するクリエイターの役割と今の販促施策に求められる発想を探る。