なぜ、「広告」と「販促」の垣根が曖昧になるのか
今回の特集テーマは「プランナー・クリエイターに求められる『売り』へつなげる意識とスキル」です。『販促会議』を読んでいる皆さんは、「『売り』や『行動変容』まで実現することは当然だ」と思っている人がほとんどだと思います。では、従来の広告産業が強みを発揮してきた「認知獲得」の先に、どのような手を打つべきなのでしょうか。
「認知だけでは売れない」と言われる時代。モノにあふれ、生活者との接点やメディアも多様化していくに伴って「知ってもらう」ことがストレートに売れることにはつながりづらくなりました。そこで再注目されているのが「アクティベーション」という概念です。「認知」獲得のその先、ミッドファネルの態度変容、さらにロウワーファネルのコンバージョンまで、消費者の行動を具体的に喚起するプランニングが求められるようになっています。これに伴い、「認知」獲得に主眼を置いていた広告クリエイター、PRプランナーの仕事や役割も変化しつつあるのではないでしょうか。
一方で、「販促」施策だけでも売れにくくなっているのも事実です。プランナーには、ブランドコミュニケーションで培ったブランドイメージや世界観をしっかりと売り場やキャンペーンにも落とし込み、両者に齟齬がないように一貫した統合プランニングが求められています。
ともすれば、「広告」と「販促」の垣根が曖昧になっていると言われるのも、どちらか片方だけではモノが売れなくなっているからだと考えられないでしょうか。本特集では、認知獲得に長けてきた広告会社、PR会社、クリエイティブエージェンシーと、販促やアクティベーションを得意とする企画制作会社に取材。今だからこそプランナー、クリエイターに求められる「売り」への意識とスキルについての意見を聞きました。
今回の特集テーマは「プランナー・クリエイターに求められる『売り』へつなげる意識とスキル」です。『販促会議』を読んでいる皆さんは、「『売り』や『行動変容』まで実現することは当然だ」と思っている人がほとんどだと思います。では、従来の広告産業が強みを発揮してきた「認知獲得」の先に、どのような手を打つべきなのでしょうか。
総合コンサルティングファームであるアクセンチュアの中で、顧客起点でのビジネス変革に取り組むアクセンチュア ソング。彼らは、「売り」につながる提案について、どのように考えているのだろうか。傘下のクリエイティブエージェンシーであるDroga5の津田 裕氏に聞いた。
「新しい時代の体験を創る」というパーパスを掲げ、イベント・プロモーションなどの体験領域で企画・プロデュースを行ってきたテー・オー・ダブリュー(以下、TOW)。統合プロモーション企画制作会社を名乗る同社は、売りにつながる提案が求められる時代に「顧客体験」を軸にどのように戦っていくのだろうか。
広告業界において、セールスプロモーション(SP)という言葉を聞く場面が少なくなった。その背景には「販売チャネルや認知を獲得する手法も複雑化したことによって、SPが単独で機能しなくなったこと」があるのではないか、とモメンタム ジャパンでSPやアクティベーションを担当してきた加藤大氏は語る。35年間の中でSPやアクティベーションのあり方は変化し、その度にクリエイターに求められる意識も変化している。
2023年に凸版印刷から社名を変更したTOPPANホールディングス。「印刷」を社名から外し、DXとSXを軸に、プロモーション・企画・パッケージ・エレクトロニクスなど、社会課題の解決ソリューションを提供する会社への変革を宣言した。顧客体験のデザインを軸に企画を設計する彼らは、広告・マーケティング業界の現状をどう捉えているのか。
認知だけでは売れなくなったと言われるが、大日本印刷の土屋祐介氏は「販促だけでも売れなくなっているのではないか」と話す。認知と販促の両者を統合してプランニングすることが求められている理由を、販促のプロの視点から考えた。
博報堂プロダクツは2005年に、博報堂プロマーク、博報堂フォトクリエイティブ、博報堂インセンティブプロモーションズ3社が統合してできた会社。設立当時から“総合制作事業会社”を名乗り、人の心を動かし「顧客化」することを得意とする。プロモーション領域で様々な視点を持つ同社は「売り」につながる提案をどのように考えているのか。
企業のプロモーション領域における成長を支援してきた電通プロモーションプラス。これまで生活者と商品のタッチポイントとなる売り場で、キャンペーン運営・店頭施策・売り場改善といった購買を促すための施策を企画してきた。そんな同社は、いま「売り」をつくる提案をどのように考えているのか。
生活者の行動を促すことは、一般的にメディアを使った認知獲得のプロであるといわれるPRプランナーにも求められ始めた。マスメディアへの露出量を確保しておけばモノが売れる時代ではなくなり、PRにおけるゴールは「行動変容(Behavior Change)」だという考え方が高まっている。プラップジャパンでは「Behavior Change」を起こすための働きかけとして、アクティベーションが認識されているという。
PR業界にもアクティベーションプランニングの知見が求められている。かつてはメディアへ戦略的に働きかけ、露出量を増やすことで生活者から認知を獲得することが最大の使命と捉えられていたが、現在は状況が変化しているという。そんな今、ベクトル取締役副社長の吉柳さおり氏が話すのは、「社員全員がアクティベーションプランナーであるべき」ということだ。