月刊『ブレーン』 創刊60周年によせて
創刊60周年を迎えた今号は、1999年7月号から続くシリーズ企画「青山デザイン会議」から始まります。
創刊60周年を迎えた今号は、1999年7月号から続くシリーズ企画「青山デザイン会議」から始まります。260回を超える「青山デザイン会議」は、スタート時の誌面によれば「広告の分野に限らず、建築、ファッションなどさまざまな分野のクリエイターとともに現在、および近い未来における課題について語り合うことで、これからの時代における新しいクリエイティブの流れを見出していく」というコンセプトを掲げ、スタートしています。特にこの1年はコロナ禍の影響で、先の予測が難しい時代といわれています。とはいえテクノロジーの浸透とともに、私たちの生活の進化はある程度予測がつくようになっているのではないでしょうか。しかし、そこで語られる「未来」はどこか予定調和で、ある程度想像ができてしまいます。
だからこそ、その想像を超えたところを生み出すクリエイティブの力が、私たちの希望を含んだ新しい世界を広げていくのではないでしょうか。それはまさに、1999年に「青山デザイン会議」という企画が投げかけた「誰も想像したことのない未来を語り合い、クリエイティビティのヒントを生み出す」という原点に返ることでもあります。『ブレーン』はこれからも、領域を超えて未来を創造してきた多様なクリエイターの皆さんと、「新しい未来」とクリエイターの役割を考えていきます。
創刊60周年を迎えた今号は、1999年7月号から続くシリーズ企画「青山デザイン会議」から始まります。
2018年、経済産業省と特許庁から報告書が発表された「デザイン経営」。日本デザイン振興会の調査(2020年)によると「デザイン経営に積極的な企業ほど高い売上成長を実現し、顧客や従業員に愛着を持たれている」との結果が出ており(図1)、事業の変革や組織文化の形成にこそデザインの力が必要という認識が広がりつつある。そこで、企業向けに多摩美術大学でデザイン経営をビジネスに実装するプログラム「TCL」を推進する永井一史さんと石川俊祐さんとともに、「クリエイティブな問題解決者になる」という考えのもとアパレル事業などを拡大してきたスノーピーク 代表取締役社長の山井梨沙さん、リサイクル企業で「捨て方のデザイン」に取り組んできたナカダイ 代表取締役の中台澄之さんが、「デザインと経営の未来」を語る。
国立新美術館「佐藤可士和展」を終えた佐藤可士和さん。その経歴を振り返ると、グラフィック、映像、空間、ブランディング、さらには企業の経営へとデザインの領域を拡大し続けてきた。今回、佐藤さんとの鼎談に参加いただいたのは、若手のアートディレクターのお2人、清水彩香さんと、高橋鴻介さん。3人に仕事の領域の広げ方、社会との向き合い方について、話していただいた。
この約1年半は、クリエイティビティの在り方を、価値を、問われ続ける期間だった。本誌の最も近しいところ、日本の広告においては、表現の変化に始まり、働き方や組織の変化が起こり、その価値や役割についての議論が続けられている。一方、海外ではどうだろう。日本の数年先を行くと言われている欧米のクリエイティビティにおいては、どのような変化が生じているのだろうか。今回は、アメリカ・ニューヨークより、I&CO 創業パートナー レイ・イナモトさん、BASSDRUM 清水幹太さん、イギリスより、電通マクギャリー・ボウエン武重浩介さんによる座談会を実施。クリエイティブの今、そして未来について議論が交わされた。
近作『チョコレートドーナツ』をはじめ、数々の舞台作品で、LGBTQや障害といった社会課題に触れるほか、コロナ下では医療従事者などを支える「上を向いてプロジェクト」を立ち上げた宮本亞門さん。コミュニケーションテクノロジーによって人類の孤独を解消することを目指して、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」の開発や社会実装に取り組む吉藤オリィさん。
クリエイティビティが求められる領域が拡大していると言われ始めて久しい。企業の経営・事業戦略からブランド構築まで、広告の枠を超えて多様な課題解決を提案してきた白土謙二さんと国見昭仁さんに話を聞いた。2人が考えるクリエイティビティの未来とは。
4月1日、「株式会社TOKIO」が設立された。同日、日経新聞には企業広告が掲載され、公式サイトには会社設立に関する動画「一本の木から」を公開。いずれもTOKIOの3人が自らの手で1本の木を切り倒しつくり上げた、木製の名刺がモチーフとなっている。一連の広告は国分太一さんがクリエイティブディレクター(CD)を務め、箭内道彦さんがスーパーバイザーとして参画。全ての制作物で「汗をかいて、手を働かせて、思いを重ねる」という、TOKIOが大事にしてきた“ものづくり”と向き合う姿勢が貫かれている。そんな2人が語る、CD進化論とは。
2021年1月に公開されたオープンハウスの広告で初タッグを組んだ、俳優 松田翔太さんと、博報堂 CMプラナー 吉兼啓介さん。共に1985年、86年生まれの同年代で、幼い頃から広告に心惹かれていた2人は、「今、自分たちはそんな広告をつくれているのか?」と問いかける。演者でありながらクリエイターの目線でCMを見てきた松田さんのこだわり、吉兼さんが求める「わからない」CMについて、話が繰り広げられた。(今号は2人による連載「広告少年」の初回拡大版としてお届けします)。