目指したのは、10年後も新鮮で、100年後も残る施設
世界にファンを持つ、鋳物ホーロー鍋ブランド「バーミキュラ」。その製造・販売を行う愛知ドビーは、2019年12月、ブランド初の体験型複合施設「VERMICULAR VILLAGE」をオープンした。“最高のバーミキュラ体験”をテーマに、バーミキュラの料理の美味しさやブランドの世界観、メイド・イン・ジャパンのものづくりを体験できるブランドの発信拠点となっている。
オリンピックに向けて、建設ラッシュと言われる昨今。東京を中心に新しい商業施設やホテルなどが次々と生まれている。デザインや機能はもちろんだが、近年、こうした空間で注目されているのが「体験」だ。それはエンターテインメント的な特別なものだけではなく、そこで得られる「体験」は企業ブランドなどの理念や思い、技術や新たな価値観など。それは時に目に見えないものであったり、かたちがないものかもしれないが、その空間を訪れることで確実に得られるものだ。本特集では、2019年に日本各地に誕生した商業施設やホテル、パブリックスペースなど8つの事例を取材。その空間がどのようなコンセプトを持って生まれ、訪れた人にどのような体験をもたらすのか、企画に携わった人たちに話を聞いた。
世界にファンを持つ、鋳物ホーロー鍋ブランド「バーミキュラ」。その製造・販売を行う愛知ドビーは、2019年12月、ブランド初の体験型複合施設「VERMICULAR VILLAGE」をオープンした。“最高のバーミキュラ体験”をテーマに、バーミキュラの料理の美味しさやブランドの世界観、メイド・イン・ジャパンのものづくりを体験できるブランドの発信拠点となっている。
2019年12月9日に京阪ホールディングスが京都の四条河原町にグランドオープンした「GOOD NATURE STATION」は、同社が2014年から推進してきた「BIOSTYLE」プロジェクトのフラッグシップとなるライフスタイル提案型の複合型商業施設である。京阪電車というトレインステーションで昭和の暮らしを豊かにしてきた同社が、令和の新しい価値観に合わせたライフステーションの創造に挑んでいる。
小田急電鉄は東北沢駅-下北沢駅-世田谷代田駅区間の線路地下化により地上に生まれた1.7キロにわたる線路跡地を「下北線路街(しもきたせんろがい)」と名づけ、現在開発を進めている。その一角に生まれた「空き地」と名付けられた空間では、地元の人を中心にさまざまなイベントを開催。新たなコミュニティ形成やコミュニケーションの場として活用されている。
「横浜の展示をやって、最果(タヒ)さんと詩のホテルとか作れたら面白いなぁと思った」──2019年3月、グラフィックデザイナー佐々木俊さんが自身のTwitterで呟いたことが、12月に京都のHOTEL SHE, KYOTOで実現した。同ホテルの3室が、期間限定で「詩のホテル」をコンセプトにした部屋へと生まれ変わったのだ。
2019年、東京・渋谷のスクランブルスクエアの一角にオープンしたテイクアウト&カフェ「なんとかプレッソ2」。実はこのお店、1日の時間帯の中で、ショップの空間もブランドも販売する商品もガラリと変わる。そんなユニークなお店を企画したのが、「パンとエスプレッソと」のブランディングを手掛けてきたコピーライター 石井ツヨシさんだ。
映画館「グランドシネマサンシャイン」は池袋に昨年7月にオープンした。都内最大級の規模感もさることながら注力したのは空間づくり。
2019年11月、渋谷パルコが約3年の建て替え工事を経て、グランドオープン。「世界へ発信する“唯一無二の次世代型商業施設”」というコンセプト通り、他にはないショップが話題を集めている。また、パルコでは空間デザインやデジタル施策にも注力している。2階のファッションフロアでは環境デザインをテセウス・チャンが手がけ、渋谷のスクランブル交差点からインスパイアされた象徴的なボーダー模様の床を展開。そして、5階のECを併設したオムニチャネル型売場ではデジタルを活用し、床が人の動きに合わせてさまざまなビジュアルに変化する。
2019年4月に横浜・みなとみらいにオープンした「資生堂グローバルイノベーションセンター」。その1階の一角に設けられているのは白を基調とした小部屋「BEYOND TIME」だ。2人1組で入るこの装置の中では、お互いの未来と過去の顔が見られる。