カヤックが提唱する「鎌倉資本主義」とは?
創業時から鎌倉に本社を置き、鎌倉の企業をITの力で支援する「カマコン」など、地域に密着した活動を行ってきたカヤック。今春、「鎌倉資本主義」というキーワードの元、「まちの保育園」や「まちの社員食堂」など、地域の企業が共同で使える施設を立て続けにオープンした。こうした活動を通じて、カヤックは何を実現しようとしているのか。
自分たちの住む街をもっと面白い場所、魅力ある場所にしていきたい。ここで生活し、働く人たちを元気にし、地域の企業を盛り上げていきたい。そんな思いで、地元に新たなイベントや場を立ち上げるクリエイターの活動が全国各地に生まれている。地元のクリエイターのコミュニティから生まれた自主企画であったり、自治体や地元の企業のコラボレーションであったり。いずれも、依頼されて始まるのではなく、自分たちの街をよりよい場所にしていくための自主的な活動として始まり、地域のステークホルダーを巻き込んで成長しているのが特徴だ。この特集では、こうした全国各地のプロジェクトの事例を通じて、地域とクリエイターの新しい関係を描き出す。
創業時から鎌倉に本社を置き、鎌倉の企業をITの力で支援する「カマコン」など、地域に密着した活動を行ってきたカヤック。今春、「鎌倉資本主義」というキーワードの元、「まちの保育園」や「まちの社員食堂」など、地域の企業が共同で使える施設を立て続けにオープンした。こうした活動を通じて、カヤックは何を実現しようとしているのか。
4月16日に鎌倉駅より徒歩1分の好立地にオープンした「まちの社員食堂」。鎌倉に拠点を持つ企業・団体27社が手を取り合って鎌倉で働く人のために作った、共有の社員食堂だ。
4月2日、鎌倉 本覚寺の境内に、カヤックと「鳩サブレー」でおなじみの豊島屋が共同で運営する、「まちの保育園 鎌倉」が開園した。カヤックの柳澤さんと、豊島屋の久保田陽彦社長に、この保育園にかける思いを聞いた。
今年5月、神戸にオープンした「KITANOMAD」は、地場野菜が買えるショップやカフェ、シェアオフィスが一体化した複合施設。仕掛け人の小泉寛明さんは、ここを「ローカルの仕事を生み出す人たちの交流の場、ローカル経済が循環する場」として育てていきたいと話す。
人口約5万人の小さな町、和歌山県海南市で年に一度開催されるマーケットイベント「Arcade」には、2日間で約1万人が訪れる。イベントを企画したのは、和歌山県にU・Iターンをした建築家やデザイナー、編集者など、若手のクリエイターたち。そのコンセプトは、“仮想の商店街”。学生時代に時間を過ごした地元和歌山の商店街での体験が原点にあるという。
名古屋市栄区にある「名古屋テレビ塔」は地元で愛される栄区のシンボルだ。2012年からテレビ塔を含む公園エリアでは、マーケット型イベントが開催されている。その名は「SOCIAL TOWER MARKET」。電波塔としての役目を終えた名古屋テレビ塔が、地域を活気づける新たな役割を担っている。
幕末の佐賀の藩校「弘道館」を現代によみがえらせる──そんなコンセプトで昨年よりスタートしたのが、佐賀県の人材育成事業「弘道館2」だ。「ポップアップ藩校」と称し、県内のさまざまな場所で、佐賀の若者に新しいまなびの場を生み出している。
山形市内にカルチャーの発信拠点として、2016年に登場した「とんがりビル」。手がけたのはアカオニの小板橋基希さんをはじめとする、まちづくり会社マルアールだ。街中にこのビルができることで、周辺エリア自体を変えていくことを意図したという。
この特集で取り上げた事例を見ていると、いくつかの共通項に気づく。その1つが、神戸の「神戸R不動産」や名古屋の「大ナゴヤ大学」のように、東京発で全国に広がった地域密着型の活動が、こうした新たな動きを地域で起こす母体(あるいはチームの一員)となっていることだ。