クリエイティブカンパニーのアッシュ(大阪市)は 1998年設立。テレビ番組制作をルーツとするが、近年は企業の映像制作やWebサイト、グラフィック、イベント企画などブランディングやプロモーションを広く手がける。音楽イベントなどエンタメ領域の実績も多く、 20.30代のクリエイターが多数活躍している。
映像を軸にしたコミュニケーションに強みを持つアッシュは創業30年以上。 2019年に事業承継を実施した。現在はプロデューサーやディレクターら、20〜30代を中心に 15名が在籍する。クリエイティブだけでなくノウハウや知見の提供まで含めた包括的な取り組みに定評があり、継続的な仕事の受注と実績に繋がっている。
2022年にはプロデューサーとして活躍してきた塩野恵麻さんが代表取締役に就任した。「私たちが引き継いだ際に第二創業期と捉え、ミッションとバリューを再定義しました。ミッションは『クリエイティブで未来をにぎわす』で、バリューは7つ。英語でかっこいいバリューを考えてみたのですが、誰が見てもわかりやすいオノマトペを使った言葉にしました。中でもクライアントワークで大事にしているのが『ぐっと、寄り添う』という項目。企業の悩みやニーズに一歩踏み込み、解決方法を伴走しながら探る姿勢を大事にしてきたことで、広報やマーケティングチームの一員として年間計画から携わるなど継続的な発注をいただくケースも増えています」(塩野さん)。
テレビ業界の制作環境の変化に伴い、 2000年代半ばから企業案件を中心とする体制にシフトした。現在の売上の大半は企業との直接取引によるブランディングや、広告会社経由の仕事、地方創生に関わる企画などが占める。近年はポニーキャニオンの地方創生プロジェクトを担うエリアアライアンス部と業務提携し、西日本を中心に地域のPR動画も制作している。このほか音楽番組の制作を長年手がけ、音楽関係の実績も多い。その代表例が、関西の音楽フェス「 RUSH BALL」。1999年の立ち上げ当初から20年以上にわたり携わってきた。
映像を基軸としたブランディング領域に強みを持ち、リクルーティングのためのパンフレットやWebサイト、PR動画の制作、社内活性化のための従業員参加型イベントのプロデュースなど、事業の幅は広い。
取締役/プロデューサーの岡本尚樹さんによると、初めて映像を制作する企業からの依頼も多い。ソフト 99オートサービスの仕事では、当初は採用動画に関する相談を受けたが、 Z世代の採用事情を鑑み訴求ポイントを整理する中で信頼を得て、採用関連の制作全般を担当することになった。
また、湯快リゾートの仕事では、ブランディングの取り組みとして体験価値を表現するスチール撮影を年間通して実施した。「クオリティはもちろん現場の調整力、瞬発力、納品までのスピード感などは、テレビ番組制作で培ったところが大きいかもしれません」(岡本さん)。
東京にも拠点があり、首都圏の仕事にも対応する。
直近では、 2019年から月島もんじゃ振興会協同組合による「月島もんじゃ」のリノベーションプロジェクト(3カ年企画)に参画。広告会社がプロジェクトリーダーを務める中、インバウンド向けに多言語のガイドマップや店舗で使用するメニューなどのツール制作、 YouTubeチャンネルの運用と多言語の動画制作のほか、空間デザインも担当。事務所を総合案内所へとリニューアルした実績もある。
若手社員が増える中、社内では働きやすい体制や環境づくりを重視してきた。イベント参加や映像コンペなどの費用の支援も行う。「ライブや舞台、イベントにもどんどん足を運んで刺激を受けてほしい。『だんじり』に参加するので休む、というのも OK。ダンサーとして活躍してきたスタッフは振付もできますし、 CMに出演してしまったことも(笑)。好きなことや“推し活”は日々の仕事にも活かされますし、皆がやりたいことを叶えられる会社でありたいですね」と塩野さん。その結果として、社員もクライアントも社名の由来である「いつも笑顔でごきげんさん」でいられる環境を大事にしている。「現在の体制や方針は、過酷なテレビ番組制作の現場を経験してきたからこそ。
現体制以後の社員の定着率は100%。若手が着実に経験を重ねていて、新しい仲間も募集中です。企画内容が固まっていない段階でも、“アッシュに相談してみる?”と選択肢に加えてもらえると嬉しいです」(塩野さん)。新規事業開発にも意欲的で、 VRを活用して海外に日本の魅力を伝える場づくりにも取り組んでいる。