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青山デザイン会議

クリエイティブな思考を生み出す「ゲーム」の力

平元慎一郎、牧野泰之、吉田 寛

世界の市場規模は29.5兆円、ユーザー数はなんと30億人!xRやVRといったハードの進化に加えて、eスポーツやインディーゲームがブームになるなど、ゲーム業界が盛り上がりを見せています。今回集まってくれたのは、ゲームを文化として捉え、名作の魅力を深掘りする『ゲームゲノム』、今年1月に二夜連続で放送された『NHKスペシャル ゲーム×人類』など、新たなゲーム番組を次々生み出し続けるNHKのディレクター 平元慎一郎さん。『大逆転裁判』や『ストリートファイター』シリーズに携わるほか、3月20日から大阪中之島美術館で開催される「大カプコン展」をはじめ、幅広いプロジェクトを手がけるカプコンのプロデューサー 牧野泰之さん。日本の大学で唯一のゲーム専門研究機関「立命館大学ゲーム研究センター」の設立に関わり、現在は「東京大学ゲーム研究室」を主宰、『デジタルゲーム研究』(東京大学出版会)の著者としても知られる、東京大学教授の吉田寛さん。もはや日本が誇る文化となったゲームと、クリエイティブの関係とは?

ゲーム遍歴と現代ゲーム事情

平元:NHKのディレクターとして、2021年にゲーム教養番組『ゲームゲノム』を立ち上げました。昨年はNHKとして初めて東京ゲームショウに出展したほか、今年の1月に放送した『NHKスペシャル ゲーム×人類』という番組も制作しました。

牧野:カプコンでプロデューサーをしています。平元さんとは『ゲームゲノム』で『逆転裁判』を取り上げていただいたときに一度お会いして。ゲーム制作はもちろん、最近はコラボグッズや、カプコン40周年記念のWebサイト「カプコンタウン」、3月20日から大阪中之島美術館で開催される「大カプコン展」など、タイトルを横断した幅広いプロジェクトを担当しています。

吉田:今は東京大学に所属していますが、前職時代に「立命館大学ゲーム研究センター」という、日本の大学で唯一のゲーム専門研究機関の立ち上げに関わりました。そこでファミコンやディスクシステムをつくった元任天堂の上村雅之さんと同僚になって人生が大きく変わり、もう20年近くゲームの研究を続けています。

平元:僕自身は平成元年(1989年)生まれで、物心ついたときからスーパーファミコンがあった、いわばゲームネイティブ世代。僕にとっては、映画や音楽や本と同じくらい、いやそれ以上の存在として、いろいろなことを教わってきました。

牧野:僕は平元さんより10歳上の昭和54年(1979年)生まれですが、幼稚園の頃から駄菓子屋にアーケードゲームがあって、それからファミコン、スーパーファミコン、ゲームボーイ、PlayStation……と、まさにゲームとともに人生を歩んできました。社会人としていくつかの職を経験したあと、「一生の間に、一度はゲームをつくってみたい!」と思って、未経験ながら運良くカプコンに入社して現在に至ります。

吉田:私は昭和48年(1973年)生まれなので、最初に買って遊んだのは「ゲームウォッチ」。ファミコンはもちろん、ゲームセンターの「スペースインベーダー」など、技術的にプリミティブな段階からゲームというものに触れてきました。

牧野:それこそ子どもの頃なんて、親との格闘。夜中、親が寝たのを見計らってゴソゴソ起き出して、隠されたゲーム機を見つけ出しては遊び、元の場所に戻してまた寝る。いつかバレて怒られてはまた隠される。そんなことを繰り返してきました(笑)。

吉田:私もどちらかというと80~90年代のレトロなゲームに隠された創意工夫に興味があって、研究にもそれが反映されています。データ容量の多さとか、映像のリアルさとゲームの本質は関係ない、というのが感覚としてあって。自分のゲーム経験の出発点がどこかによって、今見ている景色は一緒でも感じ方は違うと思いますね。

平元:ビデオゲームが誕生して半世紀といわれますが、今や世界の市場規模は映画や音楽をはるかに上回る29.5兆円、アクティブユーザーは30億人のビッグビジネスになっています。ビジネスとしても文化としても、これほど短期間にここまで大きな存在になったものって、ほかにないんじゃないかなと思うんです。

牧野:NHKさんがゲームの番組をつくったり、東京大学の先生が研究テーマにゲームを選んだり、関西を代表する美術館がいちゲーム企業を取り上げた展覧会を開催したり。「ゲームは悪だ!」といったことが叫ばれがちだった、我々が子どもの頃からすると考えられないこと。先人たちが、世界に面白いものをと…

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