2024年度のグッドデザイン賞は、国内外から5773件の応募があった。前回に続き審査委員長を務める齋藤精一さん、審査副委員長の倉本仁さん(プロダクトデザイナー)、永山祐子さん(建築家)が大賞や金賞の選出作品について総括する。
「巻き込み力」と「巻き込まれ力」
齋藤:グッドデザイン賞はここ数年、「モノのデザイン」と「コトのデザイン」をわけるのではなく、「モノのまわりにコトがあり、コトのまわりにモノがある」という意識で審査をしてきました。今回はその意識が浸透してきたと感じました。
倉本:その思いは、応募者に伝わってきただけでなく、約100人いる審査委員の審査基準としても広まってきました。大賞に選ばれたジャクエツ(01)には、「モノ」「コト」の両方の要素があったと感じます。
齋藤:ジャクエツは「障害の有無にかかわらず誰もが遊ぶことができる遊具」の開発を医療と遊具の分野を超えて実現したプロジェクトで受賞しましたが、経済効果や課題先進国としての取り組みという大義よりも、より身近な個人の気付きや熱意から始まった取り組みと言えます。グッドデザイン賞としても従来とは異なる角度からデザインを評価できるようになってきたと感じました。
永山:成果だけでなく、バックストーリーが共有される作品が多かったですね。ジャクエツも一人の強い想いが形になっていくというプロセスが共有されたことが、受賞理由として大きかったと思います。グッドデザイン賞は素晴らしいデザインを称えるとともに、「デザインが社会を変えられるかもしれない」と思わせ、その指標を示す役割もある。その意味で、秘めたアイデアを抱きながら世に出せていない…