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科学と技術で患者に寄り添う 製薬企業のブランディング

沢井製薬「QualityHug」

沢井製薬は今回初めて、オリジナル技術ブランド「QualityHug」の取り組みでグッドデザイン賞を受賞した。偽造医薬品の問題や、発がん性物質の混入リスクに着目。独自の技術で解決策を提案し、患者に寄り添うブランドづくりを進めている。

(前列左から)研究開発本部 物性研究部 香川千乃さん、コーポレートコミュニケーション部 広告宣伝グループ 森田彩加さん、丸山詩織さん。(後列左から)研究開発本部 物性研究部 三村尚志さん、山本浩之さん、技術部 鈴木悠馬さん、稲田育弘さん。

医薬品を取り巻く世界的問題が発端

沢井製薬では2022年から「技術のブランド化」に取り組んでいる。同社が保有する特許技術や取り組みを社会に広く知ってもらうことが目的だ。ブランド化にあたり、技術のカテゴライズ、コンセプトやネーミング策定、ビジュアル制作に取り組むことで世界観をつくり上げてきた。これまで2つの技術ブランドを立ち上げ、そのひとつが2023年に生まれた「QualityHug(クオリティハグ)」だ。

QualityHug立ち上げの背景にあるのは、偽造医薬品や、発がん性物質であるニトロソアミンの混入といった問題だ。偽造医薬品の世界市場は2010年時点で、日本の医療用医薬品市場に匹敵するとの報告があった。製造や流通のグローバル化が進む現在では、偽造医薬品が世界的に拡大していると考えられており、日本においても報告があがっている。ニトロソアミンの混入も2018年ごろから世界的に問題となり、2021年10月には厚生労働省からほぼ全ての医薬品における混入リスク管理の通達が出され、沢井製薬でもワーキンググループを立ち上げ対応を議論してきた。

QualityHugは、偽造医薬品の問題に対応する「Kazaria(カザリア)」、発がん性物質であるニトロソアミンの混入リスクを抑える「NOXANA(ノクサナ)」と「SUPRENA(サプレナ)」という3つの技術からなる。

「Kazaria」は錠剤表面に模様を転写する技術で、模様を見れば製造元を確認できるようになることから偽造医薬品対策への可能性を秘めている。今後実用化されることで、錠剤の表示・識別において従来の印刷や刻印とは異なる新たな選択肢を提供すると期待されている。ネーミングにもこだわりがあり、研究開発本部技術部で「Kazaria」の技術開発に従事する鈴木悠馬さんは次のように由来を説明する。「Kazari(飾り)という日本語とAuthorized(認可された)という英語を組み合わせた造語で、薬に飾りをつけることで薬の認証情報を記載できるという意味で名付けています。名前を聞いたとき、その技術の内容が簡単にイメージできる上に、親しみやすく覚えやすいネーミングを目指しました」。

「NOXANA」「SUPRENA」は、ともに発がん性物質である「ニトロソアミン」の生成リスクを抑えた薬づくりに役立つ技術だ。「NOXANA」は、薬の製造時に生じるニトロソアミンの混入リスクを予測する技術となる。ニトロソアミンの元となる窒素酸化物であるNOxを指標にしてニトロソアミンのリスクを評価することから、窒素酸化物(NOx)と評価(Assessment)、ニトロソアミン(NA)を組み合わせ、「NOXANA」という名称に。既に新製品の開発においてリスク評価の指標として活用が始まっている。

もうひとつの「SUPRENA」は、ニトロソアミンの生成を抑える添加剤を選択する技術。製品の品質を満たしながら、ニトロソアミンの生成を抑えた薬づくりを可能とする。こちらの名称も、ニトロソアミン(NA)を抑制(Suppression)する添加剤(Excipients)を選択するという、技術をイメージできるキーワードの組み合わせが由来だ。

研究開発本部物性研究部で「SUPRENA」の技術開発に従事した山本浩之さんは「実用化はまだこれからですが、本格的な実装に向けて期待が寄せられています。ニトロソアミンの混入リスクという観点で、添加剤の使用制限なしに医薬品開発ができるようになる可能性を秘めているため、私たちとしても非常に期待しています」と話す。

ブランディングで社会に技術を広める

「Kazaria」「NOXANA」「SUPRENA」という3つの技術を束ねる「QualityHug」ブランドのコンセプト策定やネーミング、ビジュアルやロゴの制作については、コーポレートコミュニケーション部広告宣伝グループの丸山詩織さん、森田彩加さんを中心に外部のパートナー企業とともに進められた。「沢井製薬は科学と技術の知見を高め、それらを活用することで品質をつくり上げていく考えを大切にしています。医薬品のクオリティと、患者さんを不安から守り包み込むイメージを持つハグという言葉を使うことで、それらの考えをブランド名にも落とし込んでいます」(丸山さん)。

医薬品の表現は難解になりがちなため、ロゴの制作やビジュアル化にあたってはできる限り医療従事者や患者にもわかりやすく伝わることを目指した。「科学と技術という『サイエンス』、患者さんに寄り添う『ハートフルさ』という、相反する要素を共存させるデザインに。寒色と暖色でそれぞれ表現し、その2色が寄り添って交わるようなイメージです」(森田さん)。

「QualityHug(クオリティハグ)」のロゴ。

「QualityHug」の3つの技術。

沢井製薬では今回がグッドデザイン賞の受賞は初となる。応募は「業界内だけでなく、一般にも広く沢井製薬の技術を知ってもらいたい」という思いがきっかけだった。「製薬会社として技術を開発して終わりではなく、生み出した技術をわかりやすくビジュアル化し、広く社会に届ける――この取り組みはデザイン的な発想から生まれたものだと思います。プロジェクト実現までの流れも含めて、知っていただけたらと考えました」と森田さん。

現在、発信は自社サイトがメインだが、今後は医療関係者に配布するパンフレットや、薬局に訪れた患者の目に触れる場での発信なども検討中だ。「技術開発とそれを社会に届けるためのブランディング、それら一連の取り組みを評価いただけたのだと思います。まだ浸透していない社会問題にも対応していることを、QualityHugを通して伝えていけたら嬉しいです。そのためにも医療関係者や患者さん、一般の方々にも広く知っていただく機会を創出していきたいです」(森田さん)。

審査委員講評:

薬とは絶対的な信頼性を要するプロダクトだが、その多様化や複雑化によって発がん性物質や、偽造医薬品などのリスクを、患者自身が知る必要性も高まっている。本プロジェクトは、このような課題に対し、製薬プロセスそのものを、患者側の視点に立ちデザインすることで、安全を担保する製薬方法や、その技術の共有化を打ち出している。医療のあり方、環境全体を前向きに変え進化させることに期待したい。

内田まほろ(うちだ・まほろ)
キュレーター/
JR 東日本文化創造財団

審査委員講評:

患者は薬に対して効果への期待と同時に、さまざまな要因から不安を抱く。QualityHugは、その不安を解消するための直接的・間接的なアプローチが高く評価された。直接的には、錠剤成形に不可欠な医薬品添加剤に焦点を当て、技術開発を通じて不純物の生成リスクを抑えている。間接的には、品質保証の証である沢井製薬ブランドとして、錠剤表面に模様を施し、患者に心理的な安心感を与えている。

朝倉重徳(あさくら・しげのり)
インダストリアルデザイナー/
GKインダストリアルデザイン 代表取締役社長

    お問い合わせ

    沢井製薬株式会社 コーポレートコミュニケーション部

    メールアドレス:advertising@sawai.co.jp

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