知り合いが、山道拓人さん・千葉元生さん・西川日満里さんの3人が主宰する建築設計事務所のツバメアーキテクツと仕事をしていると知って、手がけたプロジェクトを調べてみると興味深いものばかり。根底には太い基軸が通っている――主宰者のひとりである建築家の西川さんの話を聞きにいった。
地域に本来的な豊かさをもたらす開発
下北沢駅の南西口を下りると、緑に囲まれた道が続く景色が開けている。それも、完璧に整備された遊歩道というより、暮らしと地続きで“生きている感じ”の小道。周りに豊かな植栽が配されていて、雑草の勢いにも夏らしさが――随所に小ぶりの建物が点在している。そこで過ごしたり暮らしたりしている人の気配が、生き生きとした空気感につながっている。
これらの小さな建物群や緑地広場は、地下化した小田急線の約1.7キロメートルの線路跡地を開発した「下北線路街」プロジェクトの一環で、ツバメアーキテクツが設計を手がけている。その先に歩みを進めると現れる商業施設「BONUS TRACK」も同様だ。「時間が経てば経つほどに、地域に馴染みさまざまな人に使われていく場にしたいと考えました。下北沢はその名の通り、もともと川によって削られた谷といくつかの台地が入り組んでできた複雑な地形を持ちます。歪んだ街区に小さな店舗が密集し、何度も改変が加えられ、用途が混在する店舗も多いです。都市の地形をきっかけとして、演劇などのカルチャーと商業が混ざった独特な環境を住民自身がつくってきた歴史があります。こうした独自性を引き継ぎ、活かすためには、…