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青山デザイン会議

AI時代の「言葉」

上坂あゆ美、川原繁人、神門

若者を中心にSNSで起こっている短歌ブームや、ますます人気を集めるMCバトル……。“映え”が求められる一方で、言葉にまつわる新たな表現や熱狂が広がっています。集まってくれたのは、歌人・ラッパー・言語学者と、異なる分野で言葉と対峙する方々。2022年に第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』(書肆侃侃房)を上梓、エッセイの執筆やメディア出演から、舞台の原案や役者まで幅広く活躍する上坂あゆ美さん。言語学者・音声学者として研究を行う傍ら、『フリースタイル言語学』(大和書房)をはじめ多くの著書を執筆、MCバトル『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)のゲスト審査員も務めた、慶應義塾大学教授の川原繁人さん。大塚製薬「カロリーメイト」のWebムービー「入学から、この世界だった僕たちへ。」にポエトリーリーディングを書き下ろすなど、自身の想いや日常をリアルに表現し続けるラッパー神門ごうど さん。3人が語る、今心に響く表現とは? AIによってコピーや文章が自動生成される時代に、言葉を紡ぐ意味を考えます。

短歌とヒップホップに共通する「私性」

上坂:私は短歌をつくったり、エッセイを書いたりするのが本業ですが、ラジオやポッドキャスト、テレビの仕事のほかに、毎週スナックでも働いています。この夏には、劇と短歌『飽きてから』という舞台の原案や短歌の制作、役者にも挑戦しました。

川原:慶應義塾大学で言語学の研究をしています。研究のほかには、一般書を執筆したり、ラジオやテレビに呼んでいただいたり。ラップの韻を研究していることもあって、『フリースタイルダンジョン』に審査員として出演したこともあります。神門さんの曲が大好きなので、今日お話できるのを楽しみにしていました。

神門:それは嬉しいです。僕はラッパーで、メインの活動はライブと楽曲制作。数は少ないですが、ときどきCMなどに書き下ろしで楽曲提供を行っています。

川原:私は自分の作品で人を感動させることができないので、お2人には、すごく憧れがあるんです。短歌が今盛り上がっているというのも、俵万智さんから聞いていて。

上坂:最近はSNSの影響もあって、10~30代を中心に詠む人もつくる人も増えているし、書店に行っても短歌の棚が増えているなという実感はありますね。

神門:僕は数年前に、木下龍也さんの歌集を読んで、めちゃくちゃ衝撃を受けたんです。上坂さんの作品を見ても、「いつどこの街に行っても『はまゆう』って名前のスナックある 怖い」みたいな、こんな表現があるんだって。

上坂:ありがとうございます。ヒップホップも、やっぱり昔より盛り上がっていると感じることはありますか?

神門:僕がラップを始めた2000年代の前半は、クラスにヒップホップを聴いている子なんてほとんどいなかったのに、今じゃ呂布カルマさんがCMに出ているし、うちの子どもが「ブリンバンバン!」って歌ってますからね(笑)。フリースタイルとかMCバトルだけじゃなくて、もっと楽曲自体がフォーカスされる、もう一発エグいブレイクがあるんちゃうかなと思っています。

上坂:神門さんの前で恐れ多いんですけど……いろんな人から私の短歌はヒップホップ的だと言われていて。

川原:私も思いました。ときどきすさまじいディスりが入るのがいいですよね(笑)。

上坂:短歌特有の文化として「私性わたくしせい」という言葉があるくらい、作品の主人公=作者として詠まれやすいんです。私は特に自分の人生や実体験をベースにつくる作風なのですが、最近では匿名性の高い短歌をつくる人の方が多いような印象があります。ヒップホップの世界では、どうなんだろうって。

川原:振り幅はあるとは思います。ただ、初期のラップって、ニューヨークのブロンクスに住んでいた貧しい人たちが内輪で楽しんだり、自分たちの置かれている社会的状況を切実に語ったりというものでした。よく使われる「レペゼン(represent)」という言葉のとおり、地域性とか仲間性は重要な要素だと思います。

上坂:短歌の作者って、ざっくり人生派と言葉派に分かれている気がします。人生派は、地元を出て結婚して出産してといったライフイベントを多く詠むのですが、言葉派は自分のことというよりも、韻律の面白さだったり、季節や風景と絡めて言葉の味わいを楽しんだり。

川原:それでいうと、神門さんの楽曲はまさに人生派ですよね。

神門:いろいろ思い浮かべてみたのですが、私性がない曲はないですね。物語的なラップでも結局、僕が登場しますし。

上坂:物語的な詞を書かれるときは、視点はどこにあるんですか。僕ですか、それとも第三者が見ている僕を含めた風景?

神門:完全に僕自身ですね。…

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