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青山デザイン会議

ミラノデザインウィークから考えるデザインの役割

林登志也・安藤北斗(we+)、高野雅彰、光井花

毎年4月に開催される、世界最大規模のインテリアとデザインの祭典「ミラノデザインウィーク」。中心となる「ミラノサローネ国際家具見本市」の来場者数は37万人、うち海外からが54%を占めるなど、今年も大きな盛り上がりを見せました。今回集まってくれたのは、2014年から継続して出展を続け、「フォーリサローネアワード2024」メディアパートナー特別賞を受賞した「Straordinaria」をはじめ3作品を手がけた、we+の林登志也さんと安藤北斗さん。節水ノズル「Bubble90」や、洗剤を使わずに汚れが落とせる食器「meliordesign」を開発、これらを中心とした循環システム「TABLEtoTABLE」を現地で発表した、DGTAKANOの高野雅彰さん。35歳以下のデザイナーを対象とした「サローネサテリテ」に、日本の伝統的な裂織や久留米絣を再解釈したテキスタイルコレクションを出展した光井花さん。ミラノデザインウィークを通して、それぞれが感じた世界の潮流、そしてデザインのこれからを語ります。

ミラノサローネの“対効果”

林:we+は、新しい視点や価値にかたちを与えることを目指して活動しているデザインスタジオです。いわゆるデザイナーと少し違うのは、リサーチを大切にしていて、R&Dの部分から関わり、アウトプットまで持っていくところ。結果として、インスタレーションや一点もののような、アートワークに近い動き方が多くなっています。

安藤:ミラノデザインウィークには、コロナの期間を除いて、2014年から連続して出展してきました。今年は、イタリアのキッチンブランドElicaのフィロソフィーを体現したインスタレーション「Straordinaria」、島津製作所と取り組んだリサーチプロジェクト「WONDER POWDER」、Ambientecという日本の照明ブランドと一緒につくったポータブル照明「Remli」と、3つのプロジェクトを発表しています。

高野:僕は元々、東大阪の町工場の3代目で、家業を継がず技術だけを受け継いで起業したんですね。課題に対する解決策を提示するのがデザインだと考えていて、最初につくったプロダクトは、蛇口に付けると最大95%の節水ができるノズル。次は洗われる側ということで、昨年、洗剤を使わず水だけで汚れを落とせる「meliordesign(メリオールデザイン)」の食器を発表しました。

林:それはぜひ使ってみたい。

高野:ほかにも、サウジアラビアで砂漠を緑化するインフラ構築のプロジェクトも進めています。今回のミラノでは、水不足をはじめ、食糧不足やフードロス、温暖化や海洋汚染といった環境問題をまとめて解決できるコンセプトデザインを発表しました。

光井:私は大学院を卒業後、イッセイミヤケで洋服のテキスタイルデザインに携わってきました。もっと幅広い分野で、産地と寄り添いながら日本の伝統的な技法をデザインし直したいと考えて独立して、今回、35歳以下のデザイナーを対象にしたサローネサテリテに出展したんです。留学していた頃から、いつか出展したいと思っていたのですが、気付けば34歳になってしまったので、急がなくちゃって(笑)。

安藤:我々も、2014年に最初に出展したのはサテリテで、そのときは「作品を海外で発表してみたい」という、シンプルなモチベーションでした。そうしたら本当にいろいろな人が見に来てくれて、ポジティブでダイレクトなフィードバックをもらえるのが、すごく嬉しくて。

光井:サテリテって、家具などの完成されたプロダクトを展示することが多いのですが、私はあえてテキスタイルだけ。久留米(かすり)を再解釈した生地と、その制作過程で出る廃棄糸からつくったジャガード織り、廃棄素材を裁断して織り直した裂織(さきおり)、3つのコレクションを「錯覚」というテーマでまとめて展示しました。

安藤:ミラノサローネは世界で一番大きなデザインイベントなので、デザイナーはもちろん、メーカーやメディアなど、いろんな人たちがぎゅっと1カ所に集まっていて、デザインの潮流を直に感じられる面白さがありますよね。

光井:出展するのは初めてですが、注目度が全く違うというのは感じました。日本の記者が話しかけてくれて、ちょっとした特集を組んでくださったり、知り合いから一緒に何かやろうという話をいただいたり。私のような駆け出しの身でも、お金をかけて出展する価値はあるのかなと。

安藤:つくり手としての本気度を伝えるという意味でも、すごくいいプレゼンテーションの場であることは間違いない。

林:同じ作品でも、悲しいかな日本の展示会だと埋もれてしまうけれど、ミラノに出すと目立つ(笑)。デザイナー目線で見ると、費用対効果は高いのかもしれませんね。

高野:うちの場合、自分たちにはなかった視点が得られたことが、すごく良かったですね。たとえば、地元に住んでいるお医者さんがブースにやって来て、「私は毎年サローネに来ているけれど、あなたたちが歴代で一番だ」と言って泣いてくれたんです。

光井:それはすごい!

高野:洗剤などの影響でアレルギーに苦しむ人が増えていて、その人たちの人生を変えるプロダクトだと絶賛されました。お皿をプレゼントしたら、…

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