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ローカルから世界へ 今、地域を面白くするクリエイティブ

地方から広告表現の自由さを押し広げたい

左 俊幸、平田純一、松尾 昇

他のエリアから「九州のクリエイティブは治外法権」と言われるほど、独自路線の広告表現に溢れる九州エリア。沖縄も含め広告を幅広く担当する3人はその理由をどう見ているのか。

「やりたい放題」なあのCM

左:九州エリアのご当地広告としていつも注目しているのは、福岡県の北九州市に本社を置くスーパーマーケットチェーン「サンリブ」のCMシリーズ(01)です。制作者や表現は年々変わりながらも、一貫して物事の本質を突くところがあり、時代の変化に応じた"正解"を出しているように見えます。もう1本は大分県のフンドーキン醤油(02)ですね。2000年頃にはジャン・レノを起用したCM(「ジャン・レノ氏の3日間の恋」篇)を放映していたりと、一貫して広告に注力している印象です。最近では時代に合わせた表現にシフトしながらも「醤油なのになぜ?」というちょっとした違和感を生む表現のチャレンジを変わらずに続けているところが素晴らしいですね。

平田:僕は明太子の「福さ屋」の時報CM(03)が記憶に色濃いですね。おばあちゃんと外国人の男性が登場して、20時や21時になったことを伝えるCMです。ラジオCMで時報と絡めることはよくありますが、テレビの枠を使ったこうした試みは、今になっても新しいと思います。もう1本は福岡県のパンメーカー・リョーユーパンのCMシリーズ(04)。名画をモチーフに、それを実写化したような女性が登場して、その時々の商品やフェアの告知をする構成です。なぜかずっと名画が使われていて、女性だけが実写で。その違和感や異質感から地元の誰もが認知しているCMだと思います。

松尾:僕が一番好きなCMは、九州や山口県に店舗を展開する中古車買取の「アラジン」のCMシリーズ(05)。江頭2:50さんが叫び続けたり、滑ってくるだけだったり、とにかくやりたい放題で(笑)。CMのラストに訴求文句も入っているんですが、それで商品に落としたことにしているのもすごい。強烈ですが地元の人は見続けてきたから、当たり前のように受け入れられているCMです。

左:過去にはエガちゃんの結婚式をただレポートしただけのような、不思議なCMもありましたね。

松尾:ありました(笑)。もう1本は、以前放映されていた長崎県の質屋・ぜに屋本店のCM「全タイプ」篇。質屋に預けられたエレキギターやカメラが擬人化して、持ち主だった人との思い出を語っていくという企画です。最終的には皆持ち主の元に帰っていくんですが、これが感動するストーリーで。他の地方でもそうでしょうが、長崎県ではCMの制作単価が低いことが多く、CMのクオリティもそれに左右されがちなんですが、低予算でもセリフや物語の...

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