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「CM表現」を再考するデバイス多様化時代 監督たちの挑み方

CMの前後も続いている誰かの人生を描く「リアル」な演出の源泉

岩崎裕介(OND°)、福里真一(ワンスカイ)

2023年11月に結果が発表された「2023 63rd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」。OND°のディレクター岩崎裕介さんはフィルム部門Bカテゴリーにおいて4作品でグランプリを含む受賞を果たした。今回は、同部門の審査員のひとりであるワンスカイの福里真一さんが岩崎さんのCM演出、広告界への想いなどを根掘り葉掘りインタビュー。独特の「リアル」なCMを撮るための手法、そしてそのこだわりの理由は。

ワンカットの会話劇 そのスタイルが確立されたきっかけ

福里:今日はACCフィルム部門Bカテゴリー(オンライン動画が対象)での異常な「岩崎祭り」を受けて、話を聞かせてもらおうと思います。グランプリ(総務大臣賞)を受賞した「#俺たちのモンストーリー」(MIXI)と、ゴールドを受賞した「明治エッセルスーパーカップ」の「日々」シリーズについては、最終審査会でもどちらがグランプリにふさわしいかと議論が白熱していました。またシルバーの関西電気保安協会「相方が関西電気保安協会になってしまった男」や、ブロンズのファブリーズ「君に、鼻ツン。」シリーズ(P&Gジャパン)も岩崎さんの演出です。Bカテゴリーに岩崎旋風が巻き起こっていたと言っても過言ではないでしょう。今日はまず、岩崎さんが今のように「開眼」したきっかけを聞いてみたいです。

MIXI「#俺たちのモンストーリー」シリーズ(全8篇)「保冷剤」篇。

MIXI「#俺たちのモンストーリー」シリーズ(全8篇)「父」篇。

岩崎:ありがとうございます。最初でいうと、企画と演出を担当した「黒烏龍茶」(サントリー食品インターナショナル)のWeb動画シリーズ「黒烏龍譚たん」(全15篇、2020年公開)だったと思います。サントリーさんが当時実施していた若手のクリエイターを対象とした自主プレゼン企画の一環で出して、それが実際に採用されました。中華料理を食べる人に黒烏龍茶を売るにはどうすればよいのか、商品の本質価値を考えて、街中華を舞台に、黒烏龍茶を飲む人たちの会話劇を描いたんです。

福里:「黒烏龍譚」、ありましたね。たしかに、独特の雰囲気のある会話劇でした。

岩崎:これをつくる前は、CMって流れてしまうのでどこか空虚だなと思っていたんです。でも会話劇をワンカットで描いてみたら、"登場人物たちにはちゃんと人生があって、このCMの前後も存在していてそうだな"って思えて。自分でそう感じられるものがつくれたのが良かったですね。

福里:そこから、この感じが自分なんじゃないかと見えてきたんですね。

岩崎:そうですね。あと、福里さんが審査員を務めていらっしゃったアワード「my Japan Award」への参加も、きっかけのひとつだったと思います。

福里:「日本の価値を海外に発信する」というコンセプトの、学生や若手社会人向けのアワードですね。

岩崎:そうです。その時にもワンカットのCMをつくったんですよ。福里さんはいつも通り鋭いフィードバックをしていたんですが(笑)、僕の作品は、ちょっと褒めてくださって。あれが自信になって、血肉になっている感じがあります。

福里:それは私も覚えています。トラックの中から窓の外を撮っていて、そこに馬が通りかかって、というシーンをワンカットで切り取っていて新鮮でした。優秀賞でしたよね。そこで岩崎さんと話した時に、すでに「ワンカット的なものをやっていきたいと思ってます」って言っていましたよ。

岩崎:本当ですか。僕は福里さんに、「ワンカットと言えば広告界では瓦林智さんっていう人がいるよ」と教えてもらって、その後めちゃくちゃ見ました。あとCMをやろうと思ったきっかけは、川崎徹監督の関西電気保安協会のCMだったので。ワンカットには思い入れがあるのかもしれないです。

明治/明治エッセルスーパーカップ「日々」シリーズ(全5篇とMV)、「屋上」篇。

関西電気保安協会「相方が関西電気保安協会になってしまった男」。

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