クリエイターのアイデアとAIがかけ合わさることで、より良い未来づくりに繋がるかもしれない。電通Future Creative Centerの志村和広さんが可能性を模索する。
広告界発のアイデアがAIの新たな活用方法を生んできた(説)
時々、「広告界のクリエイターがAIを使うことで、社会課題を解決できるのではないか?」という私の考えに対して、「いや、技術分野の出身ではないクリエイターがそんなことを実現するのは難しいのでは」という意見をもらうことがあります。
私がそれに対して思うのは、逆に「広告界のクリエイターが、世界のAIの新しい活用方法を生み、課題解決をリードしている」説。今回はそれを体現した海外の事例とともに考えます。
たとえば、「ディープラーニング」を悪用した「ディープフェイク」。2020年頃から国内外で危険視されてきました。もちろん適切な対策は必須ですが、負の側面を案ずる議論が先行することによって、その高度な技術を社会のために役立てるための可能性の模索や進化が止まってしまう側面もあります。
そんな中、ディープフェイクを逆に社会のために使ったのが、菓子メーカーのモンデリーズがインドで実施した「Shah Rukh Khan My Ad」です。2023年のカンヌライオンズで Creative Effectiveness 部門のグランプリを獲得しました。パンデミックで窮地に追い込まれた小売店に対して提供された、AIを活用したサービスで、世界的なスターであるShah Rukh Khanが出演するカスタマイズした動画広告をつくることができます。莫大な広告予算をかけずとも、著名人を起用したような動画広告を流すことができ、結果、小売店の売上は大きく回復したそうです。