萩尾友樹(オレンジ・アンド・パートナーズ)
放送作家・脚本家の小山薫堂さんが代表を務めるオレンジ・アンド・パートナーズ。同社は6月、社内用の企画AI「ORANGE AI」を発表した。独自の企画を生み出す同社はAIの活用や人間との共創をどのように考えているのだろうか。取締役の萩尾友樹さんに、その開発の経緯を聞いた。
AIで企業の"らしさ"を共有化
オレンジ・アンド・パートナーズは6月20日、同社内専用のAIチャットシステム「ORANGE AI」(図1)を発表した。

図1「ORANGE AI」の仕組みの図解
このシステムは、代表を務める小山薫堂さんをはじめ、同社が過去18年にわたり取り組んできたプロジェクトの企画書をラーニングし、AIに企画をアウトプットさせるというもの。過去から現在に至るまでの同社の知見をインプットすることで、「オレンジ・アンド・パートナーズらしさ」のある企画をAIに抽出させる仕組みだ。
とはいえこのツールは、クライアント用の企画を一から生成するためにつくられたものではない。同社取締役の萩尾友樹さんはその位置付けについて、目的は大きく2つあると話す。
「ひとつは、入社したばかりの社員に、当社の企業文化や企画の考え方を身に付けてもらう、社員育成のため。もうひとつは、自身が考えた企画を、自分だけでより完成度の高いものにブラッシュアップできるよう、アイデアの壁打ち相手になってもらうためです」。
マーケティングやプランニングにはさまざまな理論や手法、型があるが、その組織らしさを加味した企画を成立させようとすると、どうしても口頭による伝承になりがちだ。さらに人を介してレクチャーを行う場合は、教える側や教えられる側の知識量や教え方、バイアスなどで、インプットする内容に偏りが生じる可能性がある。そうしたコミュニケーションのブレの要素を、AIを介することで補完するというのだ。こうした企業文化やトーン&マナーを含めた、社内の企画力やナレッジを次の世代に受け継いでいくことが、AI導入の一番の目的だ。
また、2つ目の壁打ち相手については、オレンジの過去の企画を全て把握している、"自分の相談役となるもう一人の社員"がいるような感覚だという。
システムは企画を検討中の社員がいつでもアクセスできるよう、利便性を考慮してSlackを活用。チャンネル内で「ORANGEチャットボットくん」にメンションすることで、企画・アイデアに対して回答をくれるという仕組みになっている。さらに同一スレッド内で回答内容に対しての...