東北新社グループの広告プロダクション、ソーダコミュニケーションズは2023年7月1日に創立10周年を迎えた。
常にクオリティの追求を最優先とし、クラフト力とホスピタリティで強い広告映像を生み出し続けてきた。幹部メンバーがそのこだわりを語る。
クオリティを追求するための環境づくり
2013年7月に東北新社から独立して創立されたソーダコミュニケーションズ(Soda!)。現在はプロデューサー8名、プロダクションマネージャー22名を含め50名が在籍する。創立10周年を迎え、代表取締役社長の阿部薫さんは「多くの方に支えられ、感謝してもしきれません。今後も常に本格派であるため、愚直に挑戦を続けていくつもりです」と語る。良質な広告映像を制作するための環境づくりを重視し、2022年5月には銀座から虎ノ門に移転。シンプルに整理整頓され、会議室にもゆとりがあり、お客さまやスタッフが快適に使用できる空間にこだわった。社員全員が意識し「日本一きれいな広告プロダクション」を目指す。
そんな同社は、日清食品、サントリー、リクルート、ダイキン工業といった企業のテレビCMやWeb動画などを手がけ、一貫して広告映像のクオリティを追求してきた。取締役執行役員の石川淳さんは「この10年で働く環境や価値観の変化などが急速に進み、映像制作者もそのスピードに合わせることが求められています」と振り返る。
このような変化に対応しようと、質と効率を両立する体制の見直しを重ねてきた。2018年には、社内にリサーチ業務に特化して知見を蓄積する「CP Lab.(シーピーラボ)」を設置した。「たとえば、新たな映像素材やリサーチ資料が欲しい場合。各チームが単独で動くとゼロから手配が必要ですが、ラボがあれば過去の知見や素材を各所に横展開できます」と石川さん。プロジェクトやチームを横断してノウハウを共有しつつ各案件をサポートし、クライアントのニーズや求められるスピードに合わせた業務の効率化を実現している。
強みのひとつは、ビデオコンテ(Vコン)の質の高さ。特に近年はクライアントとの合意形成の際に、競合コンペや提案の段階からVコンが求められる機会が増えた。「プランナーが描く企画のイメージをより具現化し、Vコンとして完成度を高めるには経験と技術が必要。Soda!の制作部は鍛えられているので自信があります」と語るのは、チーフプロデューサーの磯野直史さん。また、経験した場数の多さから、監督をはじめスタッフのアサインにあたり、広い選択肢から提案ができるのもSoda!ならではだ。
「ネットワークの広さが評価され、指名や相談をいただく機会も多くあります。時には挑戦的な提案をすることもありますが、Soda!の社内では最終的に"映像の質を高めることができるか"という点を最優先事項として判断し、背中を押してもらえる。そういった環境もありがたいです」(磯野さん)。
クオリティの追求にこだわる姿勢の代表例として、最近では日清食品「カップヌードル 辛麺」のテレビCM「フィギュアダンス」篇がある。昨年解散したお笑いコンビ「ピスタチオ」の2人がフィギュア化して再共演を果たすという内容で、クライアントやプランナー、ディレクターらと時間をかけて何度も地道に検証を重ねた作品だ。
現場担当の白川敏之さんとともに担当した取締役執行役員の今野俊也さんは、「約20日間に及ぶコマ撮りを行うにあたり、フィギュアと美術やカメラとの位置関係を決めるためのCGプレビズ検証、フィギュアが踊って不思議に見えるダンスを開発するための振付検証、コマ数を減らした予行テストなどを実施。多様な角度から検証し編集しつつ、何度も実験のように繰り返すことで完成しました」と明かす。
時には納期が短い仕事のオファーが来ることもあるが、高い質を維持できるのは経験してきた場数の多さから。チーフプロデューサーの吉野賢司さんも、「正攻法でクリエイターをアサインできない時も、もちろんあります。その場合も経験を踏まえ、プロデューサーとして先回りし、実現可能な制作方法を提案できます」と自信を見せる。
プロデューサー陣の個性が強みに
取締役の阿部さん、石川さん、今野さんの3人は今でもプロデューサーの肩書を持ち、現場に足を運ぶ。Soda!の創立時は若手だったが現在はプロデューサーとして活躍する橘慎哉さんも、そんなベテランたちの姿勢に影響を受けた。「変化に対応する中でも、映像制作に向かう根本の姿勢は変わらないはず。その部分を大事にしながら、自分も若手に映像制作の醍醐味を継承していきたいと最近は考えています」(橘さん)。
この粒ぞろいのプロデューサーたちの個性が、Soda!の強みともいえる。「各々キャラクターが異なるものの、目指す先は同じ。各自が社外のクリエイターたちと関係性を築いてきたから今があります。コロナ禍も業績好調な企業や業界の広告制作の機会をいただき、乗り越えることができました。世の中に数多の映像があふれる中で、驚かせ、楽しませる映像づくりを5年、10年と続けていきたいです。制作過程を発信する機会も増やしていけたらいいですね」(阿部さん)。