菓子研究家の福田里香さんは、たくさんの才能を持った方と、以前から仰ぎ見てきた。お菓子づくりはもちろん、多くの書籍を手がけるほか、さまざまなブランドのプロデュースにも関わっている。里香さんがどんな風に仕事を捉え、進めているのか。話を聞いてみたいと思った。
インタビューは「inter+view」
最初にお会いしたのは随分と前のこと。知り合いに頼んで紹介してもらったのだ。気さくで飾らない人柄で、話がさっぱりと楽しい。ささやかな仕事をご一緒したのだが、役割を把握してサバサバ進めてくれるので、とてもやりやすい。仕事が集まってくるのがわかる気がした。
久しぶりにお会いした里香さんは、ボウタイにカラフルな刺繍が入ったワンピース、竹づくりのシックなカゴバッグをたずさえて──甘過ぎないけれどキュートな装いが、人となりと重なっている。
仕事について伺いたいと質問を投げかけたら、「『装苑』(文化出版局)の連載『フード プラス1』が今年で24年になるのです」というところから話は始まった。「フード プラス1」は、里香さんが毎回さまざまな方にインタビューする形式のコーナー。「依頼された当時、実はちょうど他の女性ファッション誌からも巻頭ページの連載の話をいただいていて、ずいぶん迷ったのですが、自分の書いたコラムを読んで話をくれた『装苑』を選びました」。ファッションの先端を担っている『装苑』でフードコラムを書くことに、誘われるところがあったという。
やってみて大きな糧となったのは、インタビューの価値だった。「『inter+view』とつづられている通り、相手の視点や考えの中へ入っていけると感じたのです」。同業の人たちにインタビューすると、理解が深まって応援したくなる。何とはなしに抱いていた競争心や嫉妬心が薄まっていき、軽やかな気持ちになれたという。里香さんほどの才と力量を持った人にして、そういう時代があったのかと驚く一方、フラットで温かいまなざしのコラムが、人気を集め続けているのが腑に落ちた。
2つの正円を組み合わせた球体が仕事
里香さんの仕事は、菓子研究家という枠組みをやすやすと超え、文章を書く、本をつくる、ブランドを手がけるなど、多面的な広がりを見せている。仕事の総体をどのようにとらえているのか──...