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企業ブランドを体感 新たな空間体験の演出とつくり方

空きビルの可能性を考える「図書館」型展覧会

リソーコ「LIBRARIES 鎖でつながれた本と本棚と太陽」

3月31日まで、東京都港区海岸の「五色橋ビル」で展覧会「LIBRARIES 鎖でつながれた本と本棚と太陽」が開催されている。主催は倉庫のリノベーション事業を展開するリソーコ。空きビルの活用可能性を模索するとともに次の借り手を探す目的がある。

(左上から)展覧会の様子。右奥はさまざまな高さの本棚が内向きに楕円形に並べられた「Bookhenge」、円柱と本棚が支え合い成立する「Slant」、本棚の上に身体を委ねられる「Chaise Longue」、窓から見える高層ビルにインスピレーションを受けて制作された「Skyscraper」。

より「場」を体感してもらうために

12月の晴れた日の夕方、「五色橋ビル」8階の「LIBRARIES 鎖でつながれた本と本棚と太陽」の会場に入ると、四方から淡い西日が差してくる。約1300平米の広い会場に点在するのは、10種の本棚。照明は点けておらず、そのため日没には閉場となる。時間の経過に伴い、本棚にかかる光の角度が変化していく。「五色橋ビル」は、1986年に建てられた、運河と海岸通りに挟まれた8階建ての建物。かつては大手電機メーカーの研究開発施設として使われていたが、2016年以降はテナントを募集していた。

リソーコはリノベーションを含め、倉庫の価値を高めるさまざまな企画を手がける企業だ。14年からは建築家を招き「倉庫リノベーション研究会」を開催し、倉庫活用の可能性を探ってきた。今回の企画や会場構成、家具のデザインを手がけたのは、建築家の松井亮さん。以前リソーコと研究的な取り組みの一環で協業しており、そこから今回のコラボレーションに至った。

「最初はこのフロアの一画をリノベーションし、新たな価値を加えてほしい、というお話をいただきました。ただ、リノベーションの事例として見せてしまうと、場が持つ可能性を狭めてしまう気がしたんです。より多様な活用の可能性を考えるには、まずは多くの人にこの場を体感していただくことが重要なのではないかと。そこで展覧会という形式を提案しました」(松井さん)。

テーマに「LIBRARIES」(=図書館)を提案したのは、フロアの四方を囲む水平連続窓から入る太陽の光が関係している。「活版印刷が発明される前、本は貴重品で、鎖で本棚とつながれていたと言います。本棚の近くでしか本は読めないため、電球も無い当時は、本棚は太陽の光が届く場所に設置されていました。その後18世紀頃に活版印刷や白熱電球が発明され、本と本棚と太陽の関係は変わっていきました。この会場には日の出から日没まで豊かな太陽の光が差し込みます。日の光が当たる場に人の居場所となる本棚を配することで、この場を...

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