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広がるメタバース市場 バーチャル表現はどこまで進化したか

「食べられない」メタバース上にモスが出店した理由

モスフードサービス「モスバーガー ON THE MOON」

「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは、VRプラットフォーム「VRChat」上に仮想店舗をオープンした。一見親和性が低そうなメタバースと「おいしさ」。どこにメタバースの魅力を見出しているのだろうか。

9月6日にオープンした仮想店舗「モスバーガー ON THE MOON」。

「新商品」を「体験」に変換

モスフードサービスが9月6日にオープンしたのは、月面上に建てられたという設定の、実店舗を模した仮想店舗「モスバーガー ON THE MOON」。VRゴーグルを着ければ24時間誰でも訪れることができる。同14日に発売した新商品「月見フォカッチャ」のプロモーションの一環で、店舗も発売と合わせてオープンした。

発案したのは、同社デジタルマーケティンググループの大樂泰督さん。「“月見”製品では当社は後発なので、これまでと異なることをしなければ消費者の方々に振り向いていただけません。そこで“月見”から着想し、月上に店舗をオープンする、という企画を立ち上げました」と話す。大樂さんいわく、商品やサービスが消費者の考慮集合に入る(“買ってもいい”対象として考慮に入る)には、「長期記憶」に残すことが大切だという。

「その長期記憶として保存いただくためにはいくつかのアプローチがありますが、今回は『エピソード記憶』、つまり体験した“出来事”として月見フォカッチャを認識してもらおうと。そこで商品を体験してもらう手法を考えていきました」。

そして生み出されたのが、「仮想店舗の厨房で、実際に商品を調理する体験をしてもらう」という企画。「月見フォカッチャ」を含む4商品が対象だ。さらにその話題を最大化させるためにメディア関係者に着目。9月14日の発売に先立ち、同6日にメタバース上で記者発表会を実施した。その際はVR機器を15台ほど用意して記者を仮想店舗に招待。同社の上席執行役員 マーケティング本部長 安藤芳徳さんとマーケティング本部 商品開発部長 濱崎真一郎さんもVRゴーグルを着けて、自身の顔に似せたアバターで登壇した。

加えて発売から16日までの3日間は、時間ごとに恵比寿東店、渋谷公園通り店、渋谷道玄坂店にVR機器を設置。一般の人々も仮想店舗での調理体験ができる場を設けた。

「当社としてもちろん初の試みです。最初は(メタバース上だと)商品を食べてもらえず、おいしさが伝わらないのに!という意見もありました。ただ、バーチャルで商品をつくる体験をしてもらうことで、実際の味がどんなものなのか気になるのではという、私の中での勝算はあったんです。バーチャル美術館をつくったら実際の美術館への来館者も増えた、というニュースを見た記憶があり、そこから思い付きました」と大樂さん。

実際、結果は上々。

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